読書メモ

山崎 史郎(2017)『人口減少と社会保障:孤立と縮小を乗り越える』中公新書.

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先日読んだ『人口戦略法案』と同時期に同じ著者から出た本として比較しながら読むと味わい深かったです。

社会保険方式と税方式に関しては、やはり両方の長短所、特に社会保険方式の長所が「負担と給付の結びつき」(p.68.)にある点は改めて述べられています。

また日本の制度に対しても、以下のように述べられています。

税の投入が全体で4割にのぼっていると言っても、その内実は、税方式の費用としてよりは社会保険に対する補助の方が大きいこと、さらに、職域保険という社会保障の大きな領域はほぼ完全な社会保険方式によって運営されていることが分かる。この点から見て、我が国の社会保障は、あくまでも社会保険方式が中心となっていると言えよう。(p.85.)

また社会保険料のなあ下に、「大きく見ると「世代間」の支え合いと「世代内の支え合いの二つの性格を有している」とした上で、「今後は「世代間」の支え合いのウェイトを下げ、「世代内」の支え合いを強めていくことが必要になる。」(pp.96-97.)とも述べられています。

今後、医療、介護、福祉などの分野の人材不足が深刻化することが予想されており、「イノベーション・アプローチ」「サービス融合アプローチ」「人材多様化アプローチ」などが提案されています(p.199.)。

特に、縦割りの専門資格の相互乗り入れの可能性を摸索する「人材多様化アプローチ」については、教職課程の関係者としても考えさせられました。

本書の後半では「すまいの社会保障」と題して、住宅や居住空間のあり方についてもかなり紙幅をとって書かれています。空き屋やコンパクトシティの話は勿論、日本では弱いと言われる「住宅手当」についても可能性が論じられています。

これまで、住宅手当は、持ち家を持つだけの資力のない人に現金を支給するという経済面の保障として語られてきたし、社会保障分野では、生活保護や社会手当が代表例となるが、手当を支給しても受給者がどこのどのような住宅に住むかは、行政は基本的にタッチしないという扱いとなってきた。純粋な現金給付の建てつけである。しかし、人口減少時代には状況が大きく変わってくる。これからは、高齢者などリスクを抱えている人にとって「どこの地域のどのような住宅に住むか」が重要となり、社会保障基盤としてのすまいの重要性が非常に高まってくる。(p.227.)

子ども保険の構想も含め、「全世代型」の社会保障が求められており、現在の日本の社会保障政策の動向とも軌を一にしています。と同時に、ではいまの社会保障の資源投資で十分なのかどうかという点も気になりました。

やはり、前の人口戦略法案と同様に、介護保険制度の立案過程が著者の思想的・経験的な軸となっているように感じられます。介護保険制度の成立過程前後の社会状況については、私も今後、改めて学んで行きたいと刺激を受けました。

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