
マインドマップやデザイン思考の考え方と、マインドマップの実際のやり方や事例について論じた本でした。
マインドマップは、授業作りで思考ツールとしてもよく登場する手法ですが、デザイン関係の専門家が論じるマインドマップの意義や理念から、様々に触発されるところがありました。基本的な考えとして、以下が説明されています。
【デザイン的発想】=【実行に先立つ計画】 + 【デザイン】+【物語の力】
【実行に先立つ計画】 =「頭の作業」=「制作者の意識や意図」
【デザイン】=「手の作業」=「装飾」=「色・形・素材・質感」
【物語の力】=「コミュニケーション」=「キャッチフレーズ」=「歷史」(p.41.)
この「【デザイン的発想】=【実行に先立つ計画】 + 【デザイン】+【物語の力】」という話が様々な角度で論じられており、面白いです。
計画は、「製作者の意図」と置き換えた時、やや見え方が変わりました。意図というのは、思想と置き換えてもいいのかなと想像しながら読みました。いずれにしても、何を思ってこの商品を作ったのか、更にその商品にはどんな物語や思いが詰まっているのか、そういった背景的な要素が実は重要である、ということなのだろうかと理解しました。
ロハスやユニバーサルデザイン、ユーザーインターフェイスなどのユーザー志向の考え方が重視されてきたのは、「色・形」も大切だが、商品開発とは本来、企業の利益優先以外の人間中心主義的な「製作者の意図」が大切であることに、ユーザーもメーカーも気付いたからです。(p.43.)
物語にはもう一つの力があります。一つの商品には限られた技術と「色・形」しか注ぎ込むことができませんが、物語はいくつでも盛り込むことができます。(p.46.)
デザインに関しても、「きれいなマインドマップが周りを巻き込む(p.225,)」とあるように、色や形を含めて「きれいである」ことが、人をひきつけ、皆のモチベーションを喚起することが指摘されています。感情に関しても以下のように述べられています。
人が行動を起こすとき、感情が重要だといいます。マーケティングの世界でも、アメリカのジャーナルオブアドバタイジングレポートによると、購買行動にとって「感情」が「事実」の二倍重要だと報告しています。・・・・マインドマップが次の行動を導き出す思考ツールになりえるのは、それが感情に訴えるものを持っているからかもしれません。また、デザイナーのマインドマップは、とても明るくて前向きです。(p.63-64.)
また、ひたすら熟慮するよりも、まずはやってみて考えるという「プロダクト思考(p.244)もデザイン思考の重要な要素として挙げられていました。以下、孫引きとなりますが、本書に記載されていた『デザイン思考の道具箱』からの引用です。
アイデアは一瞬にして、ぼんと出てくる。時間をかけなければいけないのは、プロトタイプをつくるというところだ。この点は強調しすぎることがないくらい重要である。何かアイデアやコンセプトができると、その本質を議論する人がほとんどである。それではいけないのだ。 まずつくってみる。そこが何よりも大切なのだ。つくったものはたいてい失敗する。しかしその失敗から多くを学んで素早く成功に結びつける。これがプロトタイプ思考である。失敗することでコンセプトを洗練させていく方法といってもいい。失敗からこそ学ぶことができる。つくらなければ失敗しない。
(中略)
企業とプロダクトやサービスづくりのプロジェクトをおこなっていてもっとも反発が大きいのが、この「プロトタイプ思考」のプラクティス(=心構え)である。皆、「まずつくって考える」というプラクティス(=心構え)が身についていないので、良いコンセプトを作ってからプロトタイプづくりにとりかかろうとする。しかしそれでは遅い。とにかくコンセプトができたら作ってみる。すると失敗する。失敗することが実は次を生み出すので、失敗することが目的でもいいくらいである。(カッコ内は筆者)(pp.243-244.)
この話を読むと、改めて、デザイン思考やマインドマップが、「やってみてから考える」発想や商品開発などの文脈と親和性が高いことを実感します。
授業に思考ツールを導入することの賛否は、私自身もよく耳にします。それでは深い自分自身で考えた思考や言語化に繋がらない、といった発想があるように私は感じています。ただ、上記のような背景を見た場合、「深い思考」に求める志向性や発想自体が、従来のそれとは大きく異なっている可能性もあるのかもしれないと感じました。
綺麗であることも重要であり、感情を刺激することも重要であり、まずはやってみることが重要である。つまらない会議を活性化する話が本の後半にも出てきましたが、これは授業にも置き換えて読むことができるのかもしれません。
こういった発想が常によいのかどうかは判断が分かれると思いますが、一つの背景理解として参考になりました。