
福祉国家の比較社会学的な研究として大著とされる本です。
世界の福祉国家を、自由主義レジーム、社会民主主義レジーム、保守主義レジームに分類しています。
「日本型福祉国家の構造特質は、比較分析枠組みに照らせば、保守主義的な「ビスマルク型」レジームと自由主義的残余主義との混合物としての性格が強いといえる。」(p.ⅷ.)
「日本の福祉システムが、自由主義ー残余主義モデルと保守主義ーコーポラティズムモデル双方の主要要素を均一に組み合わせているということが明らかになる。」(p.ⅹⅲ.)
とも述べられています。
「家族主義が依然として福祉ミックスにおける決定的に重要なカギを握る要素である点では、日本は決してユニークではないのである。」(p.xⅱ)とも述べています。
その後の展開を見ると、この点が一つの争点になってきそうです。
日本では儒教主義の仕組みがあるように、ヨーロッパではそれがカトリシズムと結合し、きわめてよく似た理由から、福祉国家が伝統的な家族主義にコミットしている、と述べています。実際、子どもと同居している高齢者の比率はアジアでなくともかつては高く、それが今わずかになっている。つまり、ここ数十年に伝統的な家族の福祉機能が消滅し始めているとします(pp.ⅹ-ⅺ)。この議論からの論理から、ヨーロッパ諸国で起きてきた現象を、日本も今後経験する可能性があるのではないか、というニュアンスを感じました。
企業福祉と家族福祉がともに、徐々にではあるが確実に危機的状況に向かうにしたがって、日本の残余主義的福祉アプローチは強い緊張にさらされることになろう。・・・とりわけ、日本の長期的な高齢化予想によれば、今後数十年にわたって後期高齢者の規模が急上昇するという。このことは、介護負担が深刻になり、大半の標準的な勤労者家族の能力を超えるようになることを意味する。日本の福祉システムが以前として可塑的で、形が定まらない状況にあるというのは、むしろ幸いとも思える。企業福祉や家族福祉が厳しい状況に置かれているとするなら、福祉国家が残余主義を放棄せざるを得なくなるのも間違いなかろう。・・・日本型福祉国家の定義に関する最終的な判定にはもうしばらく猶予が必要であるというのが、現在のところの可能な唯一の結論である。(p.ⅹⅳ.)
日本の福祉国家としての特徴は、他国と比較したときにどこにあるのか。日本の福祉国家としての戦前戦後の展開をどう見るのか。
色々な問いを投げかけてくれる本でした。