読書メモ

楠見孝・道田泰司(2015)『批判的思考 (ワードマップ)ー21世紀を生きぬくリテラシーの基盤』新曜社. 

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多義的に用いられがちな「批判的思考」の論点をまとめてくれている本。批判的思考の研究の幅広さが実感できて、勉強になった。
批判的思考の諸概念として「反省性・省察性」「合理性・論理性」「批判性・懐疑性」の三つの視点から捉えようとしている整理も、個人的には分かりやすかった。同時に、「批判的・懐疑的」がもっとも「日常的な批判的思考イメージ」に近いという話から、「批判的思考」の語を安易に使うことを抑制すべきだなと感じた。

気になった点を三点メモ。

一点目。
まだしっかりと理解しきれていないのだが、批判的思考にとっての態度の問題が情動の問題とも結びついて、重要な立ち位置にあるように思えた。批判的思考をしようと思う、物事をそのように捉えなければいけないと考える背景には、態度や情動が必要であり、単なる技能・スキルの問題ではないのだ、という話は、大まかな意味では共感する。ただ同時に、その評価方法自体に付きまとう難しさが多岐にわたるようにも感じられた。

二点目。
批判的思考の研究において「科学」とどう向き合いかという点が一つの論点になっているようにも思えた。さらに言えば、「欠如モデル」的な発想とどう向き合うか、ということでもある。トランスサイエンスのように科学によって答えが出せない問題が多く表面化しつつある現在において、対話型科学コミュニケーションに代表されるような、市民参加型の知のありようが求められているようには思える。こういった文脈の中で「欠如モデル」に回収されていない議論のされ方に魅力を感じると共に、とはいえ、ヒューリスティックなバイアスは回避したいとなった時の、論点がどこに置かれていくのかを今後も学びたいなと感じた。

三点目。
様々な教科での批判的思考の研究が紹介されており、批判的思考の教育研究の教科横断的な性格を実感できた。ただ、教科で具体的に見るからこそそう思ってしまうのだが、個々の教科で見た場合に、それぞれの実践が「批判的思考」という語で語られなくても既にやられてきた実践の一事例という風に読み替えられないのかという点は気になった。もちろん、目標概念としての「批判的思考」の価値は感じるのだけれど、こういった「○○思考」「○○力」の議論は、それ以前の膨大な実践の蓄積との接続に悩ましく思えることもあるようには思えた。

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