読書メモ

加藤 哲夫(2002)『市民の日本語―NPOの可能性とコミュニケーション』ひつじ市民新書.

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目次については、

子どもの可能性
他人との間で自分を確認する
人の話が聞けるようになるテクノロジー、トーキングスティック
他人とのコミュニケーションというものをもっと甘く見ていた
セルフエスティーム
自分に対する思いやりはないのか
正解は外側にあるという奴隷の原理
学習塾でのエイズの話
平成純情銭湯物語
迷惑をかけよう
・・・・ほか、章立てはなく、ひたすらテーマが並んでいます。

傷つけ合い、迷惑を掛け合い、深まり、考え続けるコミュニケーションへ、というメッセージを感じました。
同時に、形式的な「対話」「議論」を批判し、理念や思想を大切にすべきという発想を垣間見た気がします。

本書では、「人と人がどうコミュニケーションをとるか」という論点について語られているのですが、そこで想定される射程はとても広いのだと感じました。
たとえば、
・会議の方法や話し方のコツのような論点はもとより、
・地域のコミュニケーションのあり方
・行政と住民のコミュニケーションのあり方
・民間、行政、非営利セクターの協働のあり方
・個人の働き方(労働者としての時間と市民としての時間)
までに及ぶものとなっている気がします。

とはいえ、コミュニケーションのノウハウもとても大切、ということで、参加型の場づくりのための方法論や工夫も多く語られています。
たとえば、
・話せばわかるか?(そうとは限らない)
・三種類のタイプ
・トラブルを起こさないための企画運営のノウハウ
・トーキングスティックをはじめとするテクノロジー
・意見は「つくる」ものだ(p.180.)
など。

さらに、社会問題の解決を、行政や専門家に頼るのではなく、
地域住民が主体となっていくべきという発想が見られたようにも思いました。
その際に、地縁コミュニティではなく、テーマ別・課題別コミュニティといった重層性や、緩やかなつながりとしてのサークルや、NPOの存在が重要となる。

授業づくりを考えた場合、たとえば、
・住民参加のあり方の変容であったり、
・「地域コミュニティ」が意味するものの中身であったり、
・住民自治、地域参加などを考える背景であったり、
・NPOや非営利セクターが必要となる発想であったり、
様々な点において、有益な気がしました。

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