読書メモ

村上芽(2019)『少子化する世界』日本経済新聞出版.

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少子化する日本や世界の動向を論じながら、今後の日本の社会のビジョンを摸索した本です。
少子化することをある程度前提としたうえで、いかに皆が力を発揮できる社会になるかを検討している点が強く印象に残りました。少子化していく他国の事例を多様に紹介することで、少子化する社会のあり方を冷静に受け入れて理解しやすい内容になっているように感じました。

このような世界を、今後、どのように生きていくのか。人口が減少することは、単に悪いわけではない。なぜなら、国力が人の数に比例するような世界ではすでになく、むしろ、人口が減れば環境負荷を減らせるという側面もある。幸福度のほか、1人当たりの豊かさを示す様々な指標で、人口では少ない北欧の国々が上位に並ぶことは見慣れた光景でもある。しかし、人間はまだ、「人口が減っているのに豊かさをキープできている」という状態を ほぼ知らない。未経験のことは誰でも怖い。また、あまりにも人口減少の進むスピードが速すぎると、国としての体制(中央と地方の関係、地方自治、社会保障、インフラ整備、福祉 や教育など)がそれに追いつかなくなる可能性が高まる。若い人がすでにほとんどいないような地方にとって、人口減少によるコミュニティの消滅は現実味のある危機であり、故郷が 消えてしまうことに対する喪失感を感じる人が増えるかもしれない。そうしたことから、「人口が減っていくのはもはや避けられないとしても、そのスピードはなるべくゆっくりにし、対策を取って仕組みを変える時間を稼いだ方がよい」と考えられよう。日本は、移民を大量に受け入れることを選択肢としないならば、出生率を少しでも上げることが、減少スピードを遅らせる方策として必要になってくる。そして、少ないなりに一人ひとりが力を発揮できる社会になればよいのだ。(pp.36-37.)

全世界でみると、2世紀中に最も勢いよく人口が増えるのはアジアではなく、アフリカ だった。日本や東アジアの高所得国、欧州では少子化が定着することで人口減少が進むが、 日本の下げ幅は欧州全体よりも大きいことが推計されている。こうしたことから、日本とし ては、「少子化対策をどう強化するのか」とともに「少ない人数でも豊かに生きていくため の方策」を検討すべきだと考えられる。(p.245.)

第7章「少子化する世界でどう生きるか」では、一例として、日本の大人世代の労働生産制が国際的にも低いことを指摘しつつ、少ない人数でも一人一人が持っている力を最大限に伸ばし、発揮できるようにすることが大切になると指摘しています。(pp.212-213.)

その際に、競争主義的な教育ではなく、企業や社会が子育てに関わったり、幼児のうちから、子どもの参加を重視した保育所の話や、プロジェクトベースの小学校の話、部活代わりのまちづくりとしてのユースワークの話など、諸外国の紹介されています。
これらの例が「生産性をあげる」話と結びつくのがやや予想外でしたが、たしかに、経営的な効率性の話ではなく、一人一人の人生の時間を主体的に使えるように促すことが、「少ない人数でも豊かにに生きていく」という話と関わることは分かる気はしました。
その意味で、本書は、少子高齢化を経済成長政策の文脈で論じるのではなく、仮に人数が減るとしても、一人一人が積極的に力を伸ばせる仕組みは何か、を追究した本だと私は捉えて読みました。

また、複数の国々の少子化政策が出てきますが、フランスへの注目度は特に高いです。その際に、フランスにおいて、連帯市民契約(PACS)という新たな家族形態を創造し、新たな家族の法的枠組みの選択肢を提供し、カップルを増やしたことを高く評価しています。同時に、日本でも夫婦別姓で結婚できる仕組みを含め、多様な選択肢を促しています。

また、出生率の議論をする際に、コーホート出生率に注目すべきとも述べていました。

「現在、年に一回は目にする「出生率」が意味するのは期間合計特殊出生率だが、コーホート合計特殊出生率(以下、コーホート出生率)にもっと注目した方がよい。第2章でも取り上げたが、コーホート出生率とは、同じ年に生まれた女性が一章に産んだ子どもの平均人数を意味するからだ。それにより、短期的な要因を取り除いた傾向をつかむことができる。(pp.179-181.)

人口減がはっきりとした時代をどう作り直していくか。そのヒントがある本のように感じました。

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