
ヨーロッパ諸国の大学入試制度の実態や、制度的な葛藤を論じた本でした。日本の入試制度や学校文化を問い直す上で、勉強になります。
いくつか印象に残った点をメモしておきます。
第一に、国にも寄りますが、口述試験の重要性が意識されていました。教科の内容を扱う際も、単に暗記して答えるというよりも、即興的に応答・対応できたり、論証・交渉力が求められているような場面もあります。口述試験の正当性に関しては、採点に関する客観性を担保できているかという点よりも、そういった力が必要であるという必要性の観点から論じられているようでした。
第二に、試験の一部が、生徒が属する学校の主体・主導で行われるケースがあることです。これはオランダの例が代表的なのかなと思いますが、全国一斉の統一テストとは異なるビジョンとして、日本にはない発想として特にインパクトを覚えました。同時に、本書でも何度も出てきていますが、試験を「一発もの」にしない工夫が重要視されており、その意味でも、学校主体での試験導入の価値から学ぶべき点は多そうだとも感じました。
第三に、大学進学希望者の増大により、多数の学生を受け入れきれないことから生じる、試験制度の「軋み」のようなものは感じました。やはり、大量の志願者をいかにさばくかとなった際に、採点制度が変わらざるを得ないケースも見られました。全国共通のテストの採点を学校の教師が行っているフランスの事例にもあるように、現実的に誰がどう協力して採点していくか、という点はやはり重要な論点となっています。
その他、過度の受験対策校としての批判もある点として、ドイツのギムナジウムや、フランスのグランゼコール準備学校などの話も出ています。また、国際バカロレアの影響で、イギリスのAレベルの大学入試資のあり方が問い直されている点(p.208.)なども報告されていました。
また、イタリアの高校生が、政府のマトゥリタ試験の改革に対して、「自分たちはモルモットではない」というシュプレヒコールのもとにデモがなされ、警察隊との諸突も起こる結果となり、こういった批判の結果、マトゥリタ試験が改訂された話(p.45.)なども報告されています。こちらは若者の社会運動の視点でも考えらせられました。