
再生可能エネルギーと地域との関係に焦点を当てて、論じられている本でした。
地域経済の活性化の観点から、以下のように第一章に示されています。
再生可能エネルギーの生産には、原動力となる資源が生産拠点の近くで豊富にとれることが求められます。木材を利用したバイオマス、太陽光を浴びるために広い面積を確保できる安い土地、水力発電のための豊富な水量と落差が得られる川など、農山村地域には豊富な資源があります。
このことを生かして、普及が求められている再生可能エネルギーを生産し、流通させることができるのであれば、地域経済の活性化につなげることができるはずです。
近年では、日本の地方、とりわけ農山漁村地域やその中心地であった小規模都市で、人口減少と高齢化、それに伴う自治体の財政難など、地域社会の疲弊にあえいでいます。再生可能エネルギーの飛躍的な普及が求められている状況は、地域経済活性化への好機として捉えられています。
同様のスローガンは、戦後の電源開発(ダムや原発の開発)でもうたわれていました。たしかに、開発工事や維持管理に伴う雇用、ダムの観光利用、 電源立地地域対策交付金(公共施設整備や住民福祉向上のための事業に対して電気料金の一部を財源として立地市町村に配分される交付金)などにより、 少なからず地域社会に恩恵がもたらされてきました。しかし、それらは一時的な効果にとどまりました。外発型(地域の外からの)開発に依存する体質 をもたらしたという見方もあります。福島第一原発事故では、住むところが奪われるといった被害までもたらしました。こうした状況の根源には、中央の資本が、地方の資源を電気に変えて、送電線網を通じて中央にすべて吸収し、その利益を独占している構造があります。
今日の再生可能エネルギーをめぐっても同じような問題が指摘されています。FITに商機をみて、多様な業種・業態の企業が、土地の安い地方に進出して発電所を開発し、中央に電気を送り込んでいます。開発の利益が地元に還元されないことに対する不満が出されています。
再生可能エネルギーは、「地産地消」により地域内に富を循環させる手段として貢献させる取組みが求められています。(pp.19-20.)
この文章からも分かる通り、地域活性化のカギとして、再生可能エネルギーを捉えているのが本書の特徴です。
同時に、国内外の普及状況や各エネルギーの概説情報、固定価格取引制度を含めた普及推進策の情報も整っており、再生可能エネルギーの現在を大まかに理解する上で参考になります。
例えば、
・日本での再生可能エネルギーの増加スピードが、近年では他国と比べて早く、特に太陽光がその流れを牽引していること(p.36.)
・地域的エネルギー需要を上回る量の再生可能エネルギーを生み出している市区町村(エネルギー永続地帯)数が、2019年時点で138あり、2011年の50から増加していたこと(p.38.)
・地域的な電力需要を上回る量の再生可能エネルギー電力を生み出している市区町村(電力永続地帯)は、2019年で226に増えて、全市区町村の約一割をしめるようになったこと(pp/38-39.)
(※このエネルギー永続地帯と電力永続地帯の定義の違いに、私は混乱しました…。)
固定価格取引制度に関しては、賦課金の増加推移なども説明されており、再エネ開発の負担を誰がすべきか、という論争点が改めて可視化されているようにも思いました。
第2部では、「再生可能エネルギーの環境問題」が論じられています。おもに開発地域でのトラブルが各地で起きている現状が示されています。印象に残ったのが、地域の旧住民と新住民の対立の話でした。地域の持続可能性や活性化を目指す旧住民と、自然環境と景観の良さに価値を重視する新住民の対立が起きる(pp.69-70.)という話が載っており、再エネの実装の際の地域でのコンセンサスをいかに整えていくかという点が、再生可能エネルギーの本質的な論点なのだと実感させられます。
第3部では、「再生可能エネルギーと『地域の力』」が論点となっています。
本書では、再生可能エネルギー開発の三原則として、アセスメント(地域の資源を管理する)、地域内再投資力(地域に労働を取り戻す)、国際連帯(地域と地域の連帯を進める)の三つが挙がっています(p.101.)。
また、アセスメントの中では、地域の再生エネルギー事業に関する、情報公開や情報共有、意見交換やパートナーシップを作り上げるプロセスの重要性が論じられています。ファシリテーターの役割も指摘されていました。
地域内再投資論などは、地域の雇用創出と直結した議論で、人口減少社会とのマッチングの可能性を感じさせるものでした。「地域新電力」の今後の展開を調べていきたいところです。
個人的に印象に残ったのは、「国際連帯」の原則で、地域の活性化を目指すだけでなく、その環境正義の思想を世界的視野から捉えるというスタンスに共感を覚えました。再エネ事業が単に市場主義一辺倒に陥らないためにも、何らかの犠牲を転嫁しないためにも、重要な視点だと思いました。