読書メモ

秦正樹(2022)『陰謀論:民主主義を揺るがすメカニズム』中公新書.

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本書は、実証研究の成果に基づき、陰謀論受容のメカニズム を説明した本です。
本書では、陰謀論の定義を、「『重要な出来事の裏では、一般人には見えない力がうごめいている』と考える思考様式」としています。
陰謀論的思考の概念測定に使われる質問が複数紹介されているのですが、例えば、「政府は、罪もない市民やよく知られた有名人の殺害に関与し、そのことを秘密にしている。」とか、私自身が一度も思ったことが無いかと言えばうそになるというか、誰しもが多少内面化している思考を垣間見る気がして、自分の認識を確認しながら読むことができます。

陰謀論がある種の「癒し」の役割を果たしており、現実と理想の乖離を埋める便利な道具として利用されている側面があること(p.35.)や、陰謀論を受容する認知的メカニズムとして「動機づけられた推論」についても説明されています。

また、分析結果で印象的だったのは、SNSやまとめサイトで陰謀論的信念を強めるのは、若者層やミドル層ではなく年配層(p.70.)であるという点です。文脈が一緒とは言い切れませんが、過去に読んだ『ネット右翼になった父』が頭によぎりました。その他、リベラル派が、自分が望む政治的目標が達成されないフラストレーションが陰謀論を引き寄せている可能性が高い(p.162.)ということや、政治的関心が高く、政治的な知識の高い人の方が、「それらしい」陰謀論を受容しやすい傾向がある(p.206.)ことなどの紹介されています。
陰謀論を否定しようと思って調べれば調べるほど、ドツボにハマっていく、という状況が想像できます。

最後の方には、陰謀論に対する対策が本書として提示されています。
うわさ話を見聞きした際に、「それは自分が考えていたことと同じことを言っている」と思ったら要注意だと常に意識しておくこと(p.220.)が書かれているのですが、併せて、情報はたまたま耳に入ったわけではなく、自ら接触しに行っている可能性ある点なども指摘されており、私たち自身が絶えずエコーチェンバーのような状態になりうることを自覚する必要があると感じました。
あと、陰謀論を避けるには、一定の専門性を担保したマスメディアの報道にある程度の信頼を置き、情報収集すべき点も述べられています。

私たちはマスメディアの情報なしに、政治や社会の情報を知ることはできないことも強く認識すべきである。「大手のマスメディアは嘘をつかない、頭から信じても大丈夫だ」などとは決して言えないが、少なくとも、私たちが知りうる情報の中で、正確性が高いことも事実である。(p.229.)

逆に言えば、メディアの業界自体に対する陰謀論が大きくなりすぎることは、社会的にも大きなリスクになる、ということだと私はこれを読んで捉えました。すべて鵜呑みにしなくてもよいけれど、ある程度のよりどころとしてマスメディアを信頼すること、そしてある意味で、そういったマスメディアのコンテンツや業界を支え応援することも重要になってくるように思います。

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