読書メモ

三井住友トラスト・資産のミライ研究所(2023)『安心ミライへの「金融教育」ガイドブックQ&A: 「生きる力」を育む「金融リテラシー」の基本』金融財政事情研究会.

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金融教育に関する研究や論文も増えてきた中、手に取った本です。
成人年齢が18歳になったことを意識しながら金融教育と消費者教育を関連付けて捉えています。また、ファイナンシャル・ウェルビーイングの概念を紹介しながら、個々人の投資や資産運用の健全性が社会や国家全体の安定性に繋がる点や、SDGsとのかかわりの中で金融を論じている点なども、参考になりました。金融と社会全体の問題とをリンクさせようとしている意図は伝わってきます。

本書では、投資に関しては、「プロフェッショナルとしての投資」「趣味としての投資」「マネープランとしての投資」の三つを挙げ、本書では主に「マネープランとしての投資」を推奨しているという立場をとっています。実際、投資で成功するコツとして、「リスク分散」「長期投資」の二点を挙げており、短期的に稼ぐのではなく、長期的な目で、資産を増やしていくことを目指す内容となっています。

印象に残った点が二点あります。

一点目は、マネープランとしての投資を「世界経済の成長の果実を、自己の資産の中に取り組んで膨らませていくスタイル」(p.67.)と述べている点です。シンプルに世界経済の成長が進み続けることを前提にしているのだと再認識させられた。確かに本書では世界経済の成長のためにSDGsに寄与していくことにも言及しているのですが、それらの議論は例えば、「成長の限界」や「脱成長」のようなベクトルには話が向きません。世界人口が増大していくことも、世界の前向きに捉えられており、食糧問題やエネルギー問題の話などには向かいません。その結果、「人類は人口増加と持続的な技術革新を行うことで長期的には成長を遂げてきており【図表12-3】、そう考えると今後も成長が続くと見込まれます」(p.71.)という説明になっています。
金融教育をする上で、この世界観を自分が前提にしているかどうかを教える側は認識している必要があるように感じました。

もう一点はESG投資についてです。
SDGsの達成のためには、数多くの国の個人や団体取り組みには膨大なお金がかかることを指摘した上で、「このような構造的な大変革を実現するためには、まさに「資産余剰者」から「資産不足者」へのお金を融通する仕組みが必要と言えます。」(p,196,)とも述べています。ただ、ここで言われる仕組みとは、所得の再配分のようなものではなく、「投資の世界において、企業が環境問題や、社会問題を解決していくために、投資家の力を活用する」(p.198.)という発想のようです。国連が提唱する「ESG投資(E:環境、S:社会、G:ガバナンス、企業統治)」の話を詳述しています。このような投資家に環境保護や持続可能性への注目を促す動きの光と影の部分については、個人的にもしっかりと考えたいところです。

あと、ふるさと納税、贈与税、相続税、金融商品等々の課税の特徴を説明する場面が各所にあるですが、個人的には、その課税の水準や設定自体を問い直したり、その基準・線引きの設定や法律によって社会のあり方がどう変わるのかを考えてみたいなあと感じたりもしました。その他、本書ではそこまで強調されてはいませんが、投資という行為を、「より良い社会を促す手段」として捉える可能性もあるのかなと考えながら読む機会となりまいした。

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