読書メモ

広井良典(2026)『日本の未来像:地球定常文明のデザイン』岩波新書.

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広井先生のこれまでの著作におけるアイデアが関連し合いながら、AIによる未来予測のシミュレーションのデータも紹介されながら、日本の未来像が論じられています。
AIシミュレーションを特に期待して読んだところがあったのですが、読んだ感想としては、「アニミズムと持続可能社会」が一番の主題のような感じもしました。

 AIシミュレーションでは、2050年までに分岐する7つのシナリオを提示しています。その中で、特に本書で評価しているのは「地域分散・成熟シナリオ」と、「グリーン成長・協調シナリオ」、その中でも特に「地域分散・成熟シナリオ」です(p.129-131.)。このシナリオに向かうために、ローカリゼーションの理念(できる限りローカルな地域においてヒト・モノ・カネが循環するような経済システムを作っていくこと)を重視すべきことが主張されてもいます。
 アニミズムに関しては、「過去に帰る」という意味でっはなく、地球倫理のような、地球レベルの公共的な視座を持ちながら、日本が伝統的にもっているアニミズム的な自然観という財産を再評価すし、日本における持続可能性の議論に「根をもつこと」(シモーヌ・ヴィイユ)を促しているように私は理解しました。鎮守の森の話や、地域の神社の存在を再評価する文脈で話も展開されています。

いくつかメモしておきます。


一点目
p.100に出てくる人類史における拡大・成長のサイクルの表と説明が面白かったです。過去20万年を振り返った時に、物質的に成長が起こるタイミングもあるが、一方で、資源や環境制約にぶつかるたびに、「持続可能性と共存(ケア)」につながる、それまでになかった観念や思想、文化を想像し、幸福に新たな意味を見出してきたと言われます。それが、約5万年前の「心のビックバン」(芸術作品のようなものが一気に現れること)、紀元前5世紀頃の「枢軸時代」「精神革命」(現代に続くような普遍的な原理を志向する思想が各地で同時多発的に起こったこと)、などを指しています。この話では、私たちは、約300~400年前の近代化から始まる成長のサイクルから、新たな意識変革を起こして「定常化」へ向かうべき、という論理になります。定常化に向かうサイクルが定期的に起こっている、という話は興味深かったです。

二点目
不老不死の話と無限の成長の発想を関連付けて論じていた点です(pp.229-234.)。私たちが必ずしも不老不死を望まない場合があるように、有限だからこそ幸せを見出すことができる側面はあるのだろうと思いました。「地球環境の制約により成長に限界がある」という論理を、前向きに自然なことのように考えていくために、腑に落ちる比喩的な説明でした。

三点目
「経済格差が小さい国(平等度の高い国)ほど環境パフォーマンスが良好である」という統計データが示されていた点です。福祉と環境の問題は実は深く関係しているという点について、本書は以下のように述べています。

平等度が高く、環境パフォーマンスの良好な国や社会いおいて根底にあるのは、経済成長あるいはパイの拡大のみを追求するような志向とは異なる、自然との関係も含んだ、相互の支え合いや社会的連帯、あるいは公共性の意識だろう。(p.223.)

その他、地域おこし協力隊を、日本における「若者版&地域版ベーシック・インカム」に近い性格だと論じていた点(p.210.)も、印象に残りました。

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