
アメリカの植民地時代、革命期~19世紀初頭までの歴史を、近年の研究動向を踏まえて論じている本です。ニューイングランドへの入植からの、イギリスの支配からの抵抗と独立、初期の比較的弱い連邦政府の権限、などのよく知られるイメージを覆しに行くようなインパクトがある論理構成が印象に残ります。
本書の軸になるのは、合衆国憲法が起草され発表されるプロセスについてです。特に独立戦争に勝利した後のカオスな雰囲気からの憲法制定までのプロセスがドラマとしても面白いです。
「独立を1783年に果たしてから4年後、立法者たちが連邦憲法を作ったことで、アメリカは一つの連邦国家へと生まれ変わった。しかしそれはただちにうまく機能したことを意味しない。アメリカを去った王党派。強くなった連邦国家への納税を拒否して西部へと遁走する人たち。反乱を起こす人たち。連邦からの離脱をほのめかす人たち。外国からの度重なる介入。とめられない奴隷制。むき出しの暴力の発現。対立は次から次へと登場した。」(p.229.)
また、連邦憲法が、起草当初は、「参加者の多くの連邦案への評価は、多くの人間が関わりすぎたがゆえの失敗作」(p.130.)という評価だったという話と、それが徐々に「政争のなかでその地位を高めていくという流れ」(p.180.)という点が面白いなと思いました。
本書では、独立初期の連邦政府を「帝国論」の文脈で、白人社会が先住民や奴隷に対して迫害を加え続けた歴史としての可能性や、強い連邦国家の歴史像の可能性を示しています。「かつて英本国と植民地の関係を、連邦と州とに再生産するという戦略を取っていたとの理解が近年注目を集めています」(p.212.)という話も驚きました。
と同時に、連邦政府の直接的なパワーの弱さというか、特に西部のカオスな感じは印象に残ります。連邦政府に従おうとしない様々な人々が主に西部に様々に登場していく話は、若干文脈や時代設定は違うのですが、先日観たNetflixのドラマ『アメリカ、夜明けの刻』を思いだしました。連邦側の支配力にも限界がある中で、先住民、白人なども全然一枚岩ではなく多様な利害が、暴力と共に渦巻いている様子をイメージしました。
あと、建国の父たちが、「民主主義」という語をあまり肯定的に捉えていなかったという話は、宇野重規先生の本などでも読んでいましたが、本書では、その状況下でもフランス革命と共鳴しながら、民主主義的な思想を重視して抵抗する人々と、連邦側の体制との対立関係が一部描かれており、この点も参考になりました。ワシントンが、フランス革命への政治的な中立を表明したことへの賛否があったことなど、同時代におけるアメリカの革命とフランス革命との対比を改めてじっくり考えてみたいところです。ジャクソンとトランプがうっすら重なる気がするところも含め、考えさられます。
印象に残った点をいくつかメモ。
・イギリス入植者がニューイングランド近辺を場所に選んだのは、「そのような貧弱な土地、厳しい気候の場所しか残されていなかった」からであるという点。つまり、イギリス系植民地は他国の植民地の関係理解が必須であるという点。(pp.21-23.)
・「代表なくして課税なし」のキャッチフレーズが、議会主権の発想の強いイギリスでは理解できなかったのではないかという点。(p.58-59,)
・ワシントン政権が、先住民との土地交渉を連邦権限にすることで抗争の発生を防ごうとしたが、各地で反発が強まり、先住民を巻き込んだ闘争が広がっていったという点(連邦政府案も先住民側では受け入れにくいものだった)(p.186.)