読書メモ

渡辺靖(2022)『アメリカとは何か:自画像と世界観をめぐる相剋』岩波新書.

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トランプの登場以後、アメリカの自画像や世界観がそれ以前とどのように変化してきたのかを説明した本。
共和党も民主党、従来の主流派が力を失い、共和党はトランプ化が進み、民主党が社会主義化が進んでいく様子が説明されている。地方政治が、国政や大統領をめぐる賛否に従来よりも大きな影響を受けるようになってきたという話(pp.169-170.)も、両極化する政治的な立場の一端として読める。

日本の状況を対比的に捉えれば、まだ日本は中道派がいるのだなと実感できるほどに、アメリカは「真っ二つ」に分断が起きているようだ。

テクノロジーやマーケティングを活用した選挙戦略がますます強化されている様子は各所で見聞きするけれど、「巧妙な駆け引き」(p.82.)として、黒人の左派的な選挙候補者が、「私は子犬が好きです」という締めくくりの選挙CMを作ったという話や、「対立候補を強く批判すれば白人票や女性票を遠ざけかねない」(p.83.)という話は、現代の選挙戦略を象徴している感じもする。

一点、今後も考えたいと思うのは、この点について。

「米国は個人の自由や権利を重んじる近代啓蒙思想に立脚した実験国家である。特定の地や制度が強力な権威や権力を有することや、特定の権威や権力が固定化・世襲化することへの警戒感がもともと強い。歴史学者リチャード・ホーフスタッターはそうした姿勢を「反知性主義」と称した。とりわけ米国流「保守」は社会工学的発想に基づく「大きな政府」を否定すると同時に、近代的・科学的・合理的な知の過剰を警戒してきた。ワクチン接種に対する共和党の懐疑は進化論や地球温暖化に対するそれと重なる。」(p.48.)

この指摘の意味するところは大まかには把握できるのだが、改めて、アメリカの多様な側面、例えば、市場主義的で格差が容認されやすい側面、宗教の影響力、トランプに代表される権威主義的なスタイルの台頭などを、どのように関連付けて整理して捉えるべきか。その複雑性を今後も考え続けたい。

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