読書メモ

片桐芳雄・木村元編著(2017)『教育から見る日本の社会と歴史 第2版』八千代出版.

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『教育から見る日本の社会と歴史 第2版』を読了。本書は、「社会」や「歴史」から「教育」を見るのではなく、「教育」から日本の「社会」や「歴史」を見ようと(p.ⅰ)試みている。教育史から日本史を見渡そうとする挑戦を感じた。

教育を「人類の文化遺産の意図的伝達」とし、「人口動態の動向」と「国際的視野」の二つの視点を意識して古代から現代まで論じている。それもあり、国内外の情報や人の移動であったり、同時期の情報の人々のネットワークをイメージしやすいように思えた。例えば、近世中期の書籍の多様な流通・浸透の様子や、幕末期の西洋教育情報の受容が活発化していることや、戦前の綴方サークルや文集等の全国規模での交流、戦後の民間教育運動の中での教師の連携など。

その他、明治以降の学校・校舎の実情であったり、地域差などについても詳しく論じられている。例えば、1900年頃の一校当たりの教員は全国平均で2~3人で、単級学校論が受け入れやすい背景があったこと、1950年頃の中学校の教員不足や校舎の不足状況など。地域差の問題は常に大きく、例えば、大正新教育における都市部に現われた新中間層の教育ニーズであったり、戦後初期の都市部と農村・山村・漁村との対比なども指摘されている。

本書は、テキストとしての性格を意識して書かれているが、古代~近世の内容も読み物として面白い。奈良時代に官僚養成機関として生まれた大学寮が、摂関政治が始まり律令体制が崩壊する中で存在意義を失う過程なども興味深かった。

現代に関して、国民権力を制限する権力拘束規範を強く持った旧教育基本法と、国民拘束的な規範性を強くもった新教育基本法の対比が示されている(p.201.)。また、新旧双方の教育基本法が、在日朝鮮人や在日台湾人、在留外国人への教育を公教育の外において捉えてきたこと(p.208.)を、今後の課題として位置付けていた。

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