読書メモ

ウィリアム ゴールディング著:黒原敏行訳(2017)『蠅の王〔新訳版〕』早川書房.

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『蠅の王』を読みました。日頃あまり小説は読まないのですが、色々と考えさせられる作品でした。仮に本書に、個人的に裏タイトルをつけるとすれば、「ルールと暴力」ではないかと感じました。

本書は、無人島で大人がいない中での子どもの人間模様を描いているのですが、私自身は、子どもゆえの描写というよりも、大人にも当てはまるように感じる場面が多い印象を持ちました。

民主的な手続きやルールを作って守るにしても、そのシステム自体の正当性や一定の権力性が必要になる。逆にそのシステムの正当性が疑われたり、暴力の恐怖にさらされると、脆く崩れうる。正論を委縮させる扇動、暴徒化し高揚する子どもたちの様子を含め、暴力の影響力の強さ(と怖さ)を感じました。様々な情報や感情が交錯する中で「話せば分かり合える」がいかに難しいことかとも感じつつ、ただ、よく考えれば今の実社会でも、理性的な対話で物事が決まる場面がどれほどあるのかも。

社会の大きな仕組みを語るよりも、そもそも人間をどう捉えているのかが問われる作品のようにも感じました。同時に、(もちろん未完でありつつも)今の民主主義のシステムが形成されるまでに流れた多くの血や多くの混乱の一部が凝縮されている作品のようにも、私には読めました。

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