読書メモ

日本教師教育学会監修(2024)『大学における教員養成の未来: 「グランドデザイン」の提案』学文社.

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『大学における教員養成の未来』を読んだ。実践的指導力の育成はもとより、教職コアカリキュラムの策定などが進む中で、大学における教員養成のビジョン、更にいえば、教育学の強みや大学の学問的な学びを最大限に生かした教員養成のあり方を示そうとした本だと私は理解した。

「大学でこそ学ぶべきこと」「大学でしか学べないこと」とは何か、という問いが本全体に通底している印象をもった。大学カリキュラムの構成要素として、「市民的教養」「教育学的教養」「教科の教養」の三つが示されている。市民的教養と共に教養教育の重要性が強調されており、開放制の理念のもと、教職大学院以外の大学院教育の重要性も示されていた。

専門学会・大学が、各大学の教職課程カリキュラムを編成する際に参照されるようなエッセンシャルカリキュラムを示すべきという話(p.14.)は、第10章のコアカリキュラムの検証において、コアカリの「学問的正当性の検証」が不足している点を示唆している点と繋げて捉えられるように思えた。

全体として、学部教員養成では、児童生徒がいない大学の限界や、教育実習の期間が非常に短い点などを踏まえ、様々な理論を学んだり(p.47.)、文脈依存的ではなく「脱文脈化した内容」を探求的に学ぶ場(p.135.)としての価値が押し出されているように読めた。関連して、第5章で教職課程のリベラルアーツの部分や、「教職以外を選ぶ者を含めた共通教養」の可能性を指摘している話(p.95.)などは、個人的に印象に残った。

補章で示されていたデータの中で、なかば大学院での学びに期待していない現職教師の声も含めて示されていたことが、本書の価値を高めているように私は思う。読む前の予想よりも、思った以上に本書のスタンスがはっきりしているような印象を受けたが、だからこそ、教師の専門性、専門職性と共に、大学教育の意義と大学教育者の専門性を含め、考えさせられる内容だった。

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