読書メモ

藪下遊・髙坂康雅(2022)『「叱らない」が子どもを苦しめる』ちくまプリマー新書.

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『「叱らない」が子どもを苦しめる』を読了。日頃、私が手に取らないタイプの本なのだけど、知り合いから勧められて読んだ。色々と考えさせられる。

私の理解としては、本書では、人が成長する過程において「思い通りにならないことを受け入れる」経験も重要で、それゆえ本書で言う「世界からの押し戻し」の経験を適度にする必要がある、という主張がされていた。その背景には、「人は葛藤を通して成長する」という捉えもあるし、近年の「褒めて伸ばす」の名のもとに、自分のネガティブな部分に向き合わせなかったり、叱らない(叱れない)状況が、家庭や学校で起きているとの認識もあるようだった。

上記の話が、不登校の増加の文脈などとも関連付けて書かれており、やや私の苦手なタッチではあったし、我が家の教育事情との乖離はあったのだけれど、色々と考えさせられることもあった。例えば、著者は「親の価値観を押しつけることを恐れない」でほしいとも言っていた。叱らない、価値観を押し付ないという大人や親の対応が仮に増えているとしたら、それらは親や大人が主体的な意思をもって選択しているケースが多いのか、やや消極的に「時代の空気を読んで」選択しているだけのケースが多いのだろうか。本書全体が、子どもの問題ではなく、大人の問題の本に思えた。

一方、「世界からの押し返し」の議論が、既存の構造・制度を単に容認することにならないために、意識すべき点も気になった。カギになりそうだと思えたのは、「悩むべきことを、きちんと悩めるようにする」工夫や、支えとしての「安全な対話」の蓄積などであった。

この種の議論と、「社会モデル」の議論は、一見すると相性が少し悪く見えるが、実際のところどうなのだろうか。不登校をどう考えるかという点について、様々に勉強してみたいと思った。

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