読書メモ

松下良平(2011)『道徳教育はホントに道徳的か?: 「生きづらさ」の背景を探る』日本図書センター.

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『道徳教育はほんとに道徳的か?』を再読了。印象に残るのは、明治以後の道徳教育の本質を「反利己主義、利他主義」とし、その根本に「市場モラル」への要請があり、国家主義は巧妙に利用されてきたと捉えていること。市場の論理が拡大すると、ルールや規範意識が強調され、道徳教育は都合よく利用されてきたともいえる。

本書が志向するのは、市場モラルを必要悪と捉えたうえで、共同体道徳の基礎の上に市場モラル教育を再構築する道。禁煙指導や賭け事の例が印象に残るが、グレーゾーンを完全に白黒つけるより、「良い加減」を模索することがポイントなのだと理解した。

そう考えると現代社会は、一律禁止の傾向が目立つ。共同体道徳に関しては、共同体の中で通用する規範とされ、そこには「かたい道徳」も「柔らかい道徳」もあるとする。個人的には、「人を殺してはいけない」理由をこどばで十分に説明するのはまず無理であり、これまで経験してきた配慮や心遣い、生きて感じた悦びの総体、自分の身体での納得などが必要なのだ、という説明が腑に落ちた。自分の生への肯定もここから生まれるのか。

著者は、現場の道徳教育の大半が技術論に陥っていると手厳しく批判していたが、著者の近年の動向(例:教科化、考え議論する道徳など)への評価も学びたいと思った。

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