読書メモ

溝上慎一他編(2018)『高大接続の本質:「学校と社会をつなぐ調査」から見えてきた課題』学事出版.

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『高大接続の本質』を再読了。高校生を約10年間追跡する「10年トランジション調査」の結果報告とその考察結果から得られる提言や関係者の意見交換をまとめた本。一番強烈な主張は、高校でいくら勉強ができても、キャリア意識が弱いと、大学に入学した後に、自分自身の成長に向かって積極的に学ばない確率が高いという指摘。 ゆえに、授業外でも自発的に学習するような、自律のエンジン(主体的な学習態度)を育て、キャリア意識を育む試みが高校でも重要となる。

大学受験が変わらないと高校教育を変えられない、という意見に対して著者はかなり否定的。大学受験と高校教育の目標は違うはずだし、卒業生の様子まで含んだアセスメントが必要だ。それなしで受験対策だけさせる高校は予備校化していると。

大学側の1年次のキャリア意識形成へのガイダンスや「個人面談」を充実させるべきとする意見には個人的にも賛成。

あと、「大学生の『生徒化』」の視点を示した話題提供者に対して、それに真っ向から反論する溝上氏のスタンスが印象に残った。1990年代以前の(多くの)大学生がしっかり学んでいたわけではないし、手取り足取りではない良質な大学教育の提供方法を模索するべきだし、近年の高校教育の実態(例:SSH,SGH)をむしろ学ぶべきだと指摘されていた。

学生のキャリア意識や自律のエンジンを意識し育てるべきは大学も同じ。となると理想は、大学が高校から細かい情報を受け継いで、個々のキャリア意識やタイプを理解しながら学習を促す必要がある。高校の進路指導の重要性も大きいが、大学側が初年次から学生を細やかに指導する責任も強く感じた。

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