読書メモ

ロジャース・ブルーベイカー著:佐藤成基・佐々木てる監訳『フランスとドイツの国籍とネーション:国籍形成の比較歴史社会学』明石書店.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

『フランスとドイツの国籍とネーション』を読了。一般に、出生地主義のフランス、血統主義のドイツとして語られやすいが、両国の国籍制度の成立史や、背後にあるネーション概念の違い、論争の変遷を描いている。国籍を政治的、文化的な文脈に中で理解すべきというスタンス。

やはり両国とも、歴史的な影響が大きいと実感した。フランスのアンシャン・レジーム期、ドイツのプロイセン時代において、国籍概念の基礎が、土地の相続権や身分制を前提にした形態から変化していく点が興味深かった。

また、隣国でも、移民経験に大きな違いがあり、過去の植民地政策や戦争経験などによって制度の論点が変わる。例えば、フランスの植民地入植者の移住、第二次大戦後に各地で追放されたドイツ人の状況への対応。1990年代前後の東欧やソ連からの民族的ドイツ人の移住など。フランスの出生地主義の成立期に、長期定住外国人の兵役免除への不満意識がブーストになる過程も印象に残った。

2000年に国籍法が変わった以後のドイツは描かれていない。エスノ文化的なネーション理解は、時に国境を軽々超えていく。様々な事情で故郷を離れた人々が帰還を目指す可能性をどう捉えるか。同時に、日本は血統主義だと分類されやすいが、「日本人」とはそもそも何なのかと、再考させられた。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

English

コメントを残す

*

CAPTCHA