櫻井茂雄『まちがえる脳』を読了。脳内の意思決定が「究極の民主主義」(p.59.)だという点に衝撃を受ける。ニューロン同士の発火の連鎖の集合で意思が決まっていくというイメージを完全には掴み切れないが、見方が変わった気がする。
またヒューマンエラーが確率的に必然的に起こるという話が興味深かった。脳内の神経回路への信号は、確率的に一定数エラーが含まれる。ということは、私の過去のあのミスとあのミスは、私のせいではなくニューロンのせいなのか、と勝手に納得した(絶対に何か違うが)。
さらに、日常で記憶を忘れたり歪曲化して捉えてしまうこともあるが、それが、創造性や柔軟性の点でポジティブにも捉え得るという点は元気を貰えた。
本書全体を通して、脳内の意思決定が全体のネットワークの中で進んでいく点が強調されていた気がする。この話は、分化しがちな科学研究への批判ともとれるし、身体性を含んだ広い意味での認識論の議論とも重なりを感じた。