古典メモ

安井俊夫(1985)『学びあう歴史の授業:知る楽しさを生きる力へ』青木書店.

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安井俊夫『学びあう歴史の授業』を読了。楽しい授業、主権者を育てる授業、共感を大切にする授業など、著者のこだわりが絡まり合い、読みごたえがある。改めて読んで、著者が、具体的な当時の人の視点に立って、その時代の「しくみ」を捉えさせようとしている点を再認識した。

知識や事実の強調も目立った。「事実の掘り起こし」の表現が印象的だった。教科書の字面を学ぶだけでは、子どもの「目の前にあるもの」にならない。生徒が討論を通して自分の考えを吟味し、事実を掘り起こす中で、自分の視点から事実を探り出すことができる。それが知識に根差した、主体形成への一歩。

戦争のもつ悲惨さ・残酷さだけを強調し、一時的に生徒が戦争否定論に傾いただけだと、戦争の他の側面を見ると、反戦論から主戦論に転じていく(これは歴史的分野→公民的分野の流れでもよく起こる。)。それ故、知識が「その子自身のもの」となり、「自分とのかかわり」で捉える必要がある(p.203-204.)。

だからこそ、「共感」にも深い浅いがあり、表面的な共感ではなく、戦争が起こる社会的な構造を理解した上で、深く当時の人びとの想い(葛藤含め)に考えを巡らし、自分の内面を揺さぶる問題として捉える。そういう共感の「深さ」が求められていると感じた。その他、発問や教材研究方法にも興味惹かれた。

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