洋書メモ

Yoon Pak. (2002). Wherever I Go, I Will Always Be a Loyal American. Routledge.

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Yoon Pakの『Wherever I Go, I Will Always Be a Loyal American』を読了。20世紀前半~第二次大戦下のシアトルの教育、特に日系アメリカ人生徒への教育を歴史的に論じた本。特に真珠湾攻撃後の、学校関係者や日系/非日系の生徒、街やメディアの意見の違いを詳述。

20世紀初頭のシアトルでは、国旗掲揚などの忠誠・愛国的な教育行為をしつつも、学校や教師の自由度を保障し、強い愛国教育を拒否していた。1930年代も、寛容さや間文化主義(Interculturalism)が強調された。それは、社会からの圧力に屈しない学校関係者や教育長らの闘いや思想の結果でもあった。

そこで描かれる実践もかなり面白く、アメリカ化といっても、緩やかな意味でのものであり、生徒の民族的なルーツを生かした(大切にした)授業が目指されていたことや、HRや全校集会、文学や作文の場が有効に使われていたなど示されている。「緩やかなアメリカ化」という表現が非常に印象的だった。

そして真珠湾攻撃で学校の様子が一変したことを再認識させられる。攻撃が起こった直後に、シアトルの学校では教員が集まり、生徒集会を開き、寛容の精神を強調し、従来の方針を維持しようとした。ただ社会的な圧力の中で、それが維持できなくなり、最終的には日系移民の強制収監へと繋がっていく。

タイトルは、どこへ行こうとも自分はアメリカ人である、という収監される日系人の言葉を意識したもの。同じ授業実践や教師のスピーチでも、日系/非日系の生徒で感想が異なっていた。生徒の手紙やインタビュー調査も用い、「アメリカ化」の概念に埋もれがちな、多様な側面を分析しており勉強になった。

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