感想メモ

【本】大村璋子編著(2009)『遊びの力:遊びの環境づくり30年の歩みとこれから』萌文社

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目次は以下の通りです。

プロローグ 人を育む遊びの力
第1章 年表で見る遊びの環境づくりの変遷
第2章 さまざまな活動の展開
第3章 遊び権利を実現する仕組みづくりへ
第4章 座談会 みんなで語る遊びの環境づくり30年
エピローグ 大村璋子、虔一が語る遊びの環境づくり
資料編
おわりに-遊びの力を次の世代に

遊び場(プレーパーク)が日本に出来ていく歴史を説明した本です。
様々な事例や、関係者の座談会なども収録されており、多様な角度から空気感を感じることができます。
前提として、遊びの場や遊びの力の価値や意義、そしてそれを実現するための環境づくりの意義や事例などが書かれています。
その上で、私にとっては、それを取り巻く様々な考え方に興味惹かれました。

一点目
行政とのかかわりの中でまちづくりを進めていく関係者の動きや試行錯誤がよく分かる内容になっていると感じました。
恥ずかしながら、私はこれまで「まちづくり」のニュアンスをイマイチ掴めていないところがあったのですが、本書を読んでなんとなくしっくりいったような。
本書の事例が様々に紹介されているので、分かりやすいのかと思います。
例えば、名古屋市天白公園の整備に向けた話など、とても良かったです。市民と行政が話し合いながら、協力して公園ができていく過程が分かります。

以上のように、私たちは名古屋市との対話をすすめていきました。特に肩肘張って談判に行くというようなものではなく、ただただ粘り強く自分たちの考えを伝え、理解してもらうように努力しました。会が発行したニュースの類や、自分たちで見つけた公園づくりや自然保全に関する新しい本など、自分自身が勉強したことや手に入れた資料をせっせと市に届けました。市の側も、最初のうちは構えておられましたが、私利私欲で運動しているのではない私たちの気持ちが通じるようになってくると、市が考えていることを私たちが納得するように、おだやかに話してくれるようになりました。とくに、市が最初の設計計画案を見直すことを決めた後では、とても話しやすくなりました。

p.71.

座談会で出ていた「行政がかかわると面白みが減る、という議論に結論が出ているとは思わない。」(p.154.)の指摘からも、行政との連携が大切であることは感じれ、同時に、中間支援組織やNPOの役割も考えさせられました。

二点目
「遊び場」を作る運動がおこる際に、遊びの価値だけでなく、それを取り巻く地域のあり方や自治のあり方、住民のあり方が問い直されているような印象です。
以下の大村さんの話など、とても印象に残りました。

昔、桜丘冒険遊び場の時代に「遊ばせ屋さん」と朝日新聞が記事に書いたことがあり、我々が大反論したことがある。今の状況を見ても、あそこにプロの「遊ばせ屋さん」がいるから、あそこに預けると子供が賢くなるという思い出、子どもを遊びに行かせている子どももいるのではないか。そういうスタイルで冒険遊び場が広がった部分があるのではないかと危惧している。子供が本気になって、生き生きと遊ぶことが大事なのだという方向に行かないといけない。・・・単なる遊びだけじゃなくて、子どもの生活そのものを問題にしないといけない。そのときそのときを自ら楽しめる暮らし。それがないといきいきとした子供が育たない。

pp.157-158

プレイワーカーやプレイリーダーの育成は大切だけれども、地域と共にあるような場でないといけない、ということなのだろうと感じました。保護者の「消費者化」に対して、強く反発されているのがよく分かりました。行政とのかかわりに関しても、同じことが言えるのだと推察されます。

日本で始まった指定管理者制度も、進め方によっては住民主体で動かなくなるのではないかと心配です。住民の側にも理由があります。子供のけがに関して行政の責任だとつつくようになりました。行政も住民のために一生懸命やっても、そういう風に言われるならばと逃げてしまうでしょう。

pp.184-185.

この話は、「これからは、地域が文化を作れる媒体になれるかどうかが鍵です」(p.185.) という話と直結しているように思えました。

その他、いくつかメモ。
・中学高校生にとっての、部活以外で、商業施設以外の場所で、「もっとエネルギーをぶつけられる場所が必要なのでは」(p.78.)の指摘などは、とても共感しました。遊び場というと、小学校以下のイメージを想定していた私にとって、認識を改める機会となりました。
・リスクとハザードを区別しながら、「遊びの価値」を尊重していこうとする発想(p.112,)も理解できました。
・20世紀前半に進展する都市化のなかで、スウェーデンや、イギリスなどで、遊び場が隆盛したこと(p.36.)
・日本でも1960年代から、交通事故増加などを背景としながら、遊び場を作ってほしいという要望があがり、公園の量的整備が進む。同時に、公園利用上の禁止事項を気にせずのびのびと遊べる「望遠遊び場(プレーパーク)作りが、1970年代から各地に広がり始める。(pp.38-39.)。同時期は、子どもの増加で小学校や保育所の数が追い付かない現象も発生していた。(p.143.)

プレイパークに対する私のイメージの狭さを痛感させられた、とても学びになった本でした。

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