感想メモ

【本】Anne-Lise Halvorsen. (2013). A History of elementary social studies: Rhetoric and Reality. Peter Lang.

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初等教育に関する米国社会科の通史を描いた本です。
米国社会科教育史研究では、中等教育が中心に論じられる傾向があります(それが日本と異なるようにも思います)。
本書は米国の初等教育の社会科通史を描いている点で、大きな貢献がなされています。
純粋に読んでいて通史理解がはかどります。同時に、とてもとても読みやすい英語です。

読んでいて、さまざまな点で、従来の研究と異なる特徴がある気がします。

一点目は、方法論について
副題に「レトリックとリアリティ」とある通り、教育学者や教育団体レベルの言説と、地方や学校への理論の普及のずれに、本書は注目しています。そのために、主に特定地域の学区レベルの教育委員会の公文書が利用されています。こういう試みをした先行研究は過去に一部見られますが、その立場をはっきり示している点が本書を象徴しています。

二点目は、理論と現実のジレンマへの解釈について
先の副題に関する問題と繋がりますが、本書を読んでいて一番印象に残ったのは、ポール・ハンナの同心円的拡大原理に基づく社会科教科書が爆発的に売れた理由についてです。ハンナと教科書会社との間での交渉なども描かれているのですが、結果的に、誰にでも使いやすくて、専門的知識がなくても教えられる教科書に仕上がります。これが結果としてアメリカの小学校教師に多く受け入れられた。そういった解釈になっています。これは逆に言うと、それ以外の多くの理論や教材開発などが、教師に高い専門性を要求したり、研修・訓練期間を多く要求したがゆえに普及しない、という話と対をなしています。
結論として、現代においても様々な理論や教育論が提案されているが、同心円的拡大原理に代わる有力案は出ていない、とされています。

本書の裏テーマがあるとすれば、「教師の専門職性に対する葛藤」みたいな感じかなと個人的に思いました。

初等と中等の違いを際立たせながら、本来学際的な学びを志向する社会科教育を教えることの難しさを顕在化させている著書だと思いました。

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