感想メモ

【本】藤岡信勝(1991)『教材づくりの発想』日本書籍.

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目次は以下の通り

1 教材づくり入門コース
2 社会科教材づくりの発想
3 「飛び地」の謎を追う-教材開発フィールドワークの発想と展開
4 基礎学力指導の教材論
付 教材開発の記録-私の歩み

教材作りの考え方、実践について、著者の知見から多くが語られており、有名な本です。
授業準備の関係で、久しぶりに再読。

「上からの道」と「下からの道」の表現はとても有名ですが、改めてその両方のアプローチの魅力を感じました。
「下からの道」は、いわゆる「ネタ」を重視する授業作りとも接点がありうる
と感じました。
著者が本書で紹介している「飛び地」に関する教材開発や、そのほかのいくつかもの事例を含め、実践者・開発者自身が問題を追究していく姿が印象に残ります。
所々で、有田和正氏の本を読んだとき感じた印象と少し近いものを感じる瞬間もありました。

「教材には二つの条件がある」とされ、その二つとは、「①子供の興味や関心を引き、思考活動の対象となり、疑問を起こさせるような性格を有していることである。もう一つは、②それが、科学的概念や新しい知識の習得とぴったりかみ合うように組織され、位置付けられていること」の二点とされます。

この二点についても、著者自身の試行錯誤がしっかりと示されているので、教材研究のプロセスや思考回路などについても、読者がたどりながら読むことが出来ます。この点も非常に参考となりました。

二点印象に残ったことをメモしておきます。

一点目。良い問題や問いの立て方についての言及があります。

そこで、「どの予想が答として正しいかを調べる手立てが存在する」ことが良い問題の規準である、という記述があります。

よい問題の第二の基準は、問題に対する答が存在し、しかもどの予想が答として正しいかを調べる手立てが存在するということである。これを検証可能性とよんでおこう。・・・(中略)・・・これに対して、さきにあげた「明治維新はブルジョア革命か」といった問題は、直接的な検証手段を欠いている。・・・(中略)・・・以上のことを角度を変えて言うと、問題作りではいきなり本質を問うてはいけないということでもある。資料で正誤を確かめるような現象を問うて、それが結果的に本質的なものの認識に到達できるようにするのが教材づくりのポイントである。「幕末の蘭学者たちはどんな気持ちで蘭学の研究をしていったのだろうか」といった問題よりも、「彼らは『解体新書』を一日で何ページくらい訳せたと思うか」という問題の方がはるかに優れている。小さなことでもはっきりたしかめられる事実を通して、より豊かなイメージをえがくことができるようになるものである。それをつきつめていけば本質的なものがみえてくるのである。

pp.46-47.

この主張に納得しつつも、現代の一部の教育改革の流れとの若干の差異も感じました。

同時に「答えのない問い」「解釈が多様にありうる問い」を授業で提示する際は、その問いの目的や授業の最終的な落としどころ、また、その問いを追究する際のヒントやサポートになる情報提示のあり方など、様々な点での配慮が非常に重要になってくることを改めて確認できた気がします。

もう一点は、やはり、社会科の教材研究の柱は「文献調査」と「現地調査」なのだなという点です。

その両方の重要性が本書で事例を通して語られています。同時に、「決定的な一冊」の出会いの重要性についても、とても共感できました。

教育内容の研究では、数多くの文献を渉猟することを余儀なくされるのが常である。私もこの教材づくりのために本箱一冊くらいの書籍・資料を集めた。しかし、また、一方では、内容構成の柱となる様な主要に依拠する文献はどれか一つに決まってくるものである。「決定的な一冊」にめぐりあわないうちは、どうも全体のまとまりを欠いてうまくいかないということが多いのである。しかも社会科の場合についていうと、教育内容構成に役立つ文献は、そのサイズや内容の専門性の度合いにあまり関係がない。むしろ、一般向けに書かれた比較的小さな書物のなかに、有益なヒントが含まれていることが多いのである。専門性の度合いの高い本は、内容構成の柱が決まってからそれを具体的な事実で裏付ける際には便利である。

p.118.

最後の「付 教材開発の記録-私の歩み」を読んでも著者が様々な教材開発に意欲的に取り組んできたことが実感できます。

大変勉強になりました。

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