読書メモ

【本】若林芳樹(2022)『デジタル社会の地図の読み方・作り方』ちくまプリマ―新書.

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目次は以下の通りです。

第1章 地図でつながる人と世界
第2章 作り手と世界をつなぐ―地図作成の舞台裏
第3章 読み手と世界をつなぐ―メディアとしての地図
第4章 アナログとデジタルをつなぐ―地図のIT革命
第5章 課題解決につながる地図―地図リテラシーの応用

デジタル社会における地図の使い方や作り方自体が変化していることを説明している本です。
個人的には、地図に関する様々な論点が豊富に載っており、教材研究として参考になりそうな気がしました。

面白いなと思った点をメモしておきます。

・17世紀の地理学者が、部屋に籠ってひたすら地図や文献と格闘しており、今と仕事の姿が違うという話。(p. 15.)

・同じ場所や地域を表す地名表記は一つとは限らない、という話(p.33.)

・地図には現実を誇張したり省略したりする操作が加わっている、という話(p.37.)

・2019年台風15号による千葉の停電世帯数の時に、千葉のように市町村で面積の差が大きい場合、世帯数のような量的データを階級区分図で表すと、同じ規模の被害であっても面積の大きな市町村の被害が誇張されてしまう、という話(p.50.)

・不動産広告の地図には、物件のアクセスの良さを強調するアクセスマップのほか、住宅情報の環境を描いた地図では、商業施設、公園、学校などプラスのイメージを高める要素が目に付くように書き込まれ、ネガティブな情報は削除されることがある、という話(p.102.)

・グーグルをはじめとするウェブ地図では、国境を消去したりグレーで曖昧に表現したり、アクセスする端末の言語設定などから利用者の母国を推理して地名表記を切り替えるといった対応を行うことで、問題を回避している、という話(p.105.)

・いまでも地形や緯度経度がわかるような中縮尺以上の詳しい地図を外国向けに公開していない国は多数ある、という話(p.107.)

・「一般には誰もが共通に知っている主要な場所の地名が認知地図の骨格を成している」ゆえに、小中学校の地理の授業で、地図帖の主要な地名と位置を暗記する学習が、共通する認知地図の骨格を形成する上で避けられないステップである、という話(p.119.)

・ウェブ地図の検索やナビゲーション機能を使うと、見たいものだけしか見えなくなり、世界を広い視野から見渡す習慣が失われてしまう恐れがある、という話(p.119.)

・日系ブラジル人の多い豊田市や浜松市で手書き地図を集めたところ、同じ町に住んでいても日本人と外国人では異なる認知地図を持っていることを示唆された、という話(pp.132-133.)            

概説的に様々な視点が提供されており、参考になりました。

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