以下の本の中の一章(pp.1-16.)です。
William J. Reese and John L. Rury. (2008). Rethinking the History of American Education. Macmillan.
本章とは別ですが、Contributuionに書かれていたCarl F.Kaestelへの愛がすごかったです。クレミンやベイリンとの関係、さらには本書がアメリカ教育史のその後の発展を描くことが述べられています。
本章に関するメモ(メモ書きなので誤読もあるかもしれません。)
・1960年代~70年代の動乱が起こる。その背後には、学校教育の発展史観への批判、いわゆるリビジョニストの再解釈がなされた。彼らは不平等に注目する。
・本書はポスト・リビジョニストの時代の教育史のトレンドを明らかにするエッセーが多く載ることになるとのこと。
・1960年代のベイリンやクレミンの研究が紹介されています。いずれも、それ以前の教育史よりも、教育をより広い視点から捉え、社会や文化と教育の関係性を描く点に特徴がある。
・その後、1960年代後半から1970年代にかけて、ラディカルリビジョニストが登場。この立場は、学校をイデオロギー装置として捉え、社会的経済的なエリートの影響や、不平等の再生産などに焦点を当てる。カッツ、カリヤ―、スプリングなど。
・解釈の是非はともあれ、ラディカルなリビジョニストの提起の意義を認めています。
・ただ、ラディカルリビジョニストの解釈は、クレミンやベイリンとはかなり異なり、教育社会学、ニューレフトの影響を強く受けていた。
・1980年代以降、リビジョニストの解釈の影響は薄まる。
・ラヴィッチによるリビジョニスト批判も起こる。学校のポジティブな面を見逃しているという指摘。
・その後、タイアックやカステルなどによって、リビジョニスト的な視点を含みつつも、学校を単なる抑圧機関として見ない、バランスの取れた歴史解釈がなされるようになる。
・その他、1980年代になって扱われるテーマ・アプローチに広がりが出てくる。(ジェンダー、人種、労働市場、市民団体との関わり、アフリカ系アメリカ人史、先住民史、女性史など。)
➡代表作として、ホーガン、アンダーソン、ラバレー、ミレル、アダムスなどの研究が挙げられている。
・いずれの研究もリビジョニストが描いた以外の、学校のポジティブな面(機会の獲得や進歩・成長など)にも焦点を当てる。ミレルの研究では、学校を様々な力の闘争の場のように論じていた。
・アメリカ教育史への社会的、経済的影響を含む複雑性をより詳しく表現できるようになってきた。
各章の紹介がなされています。
・植民地期やアンテベラム期(南北戦争以前)の公教育の話。
・黒人の学校における白人・黒人教師のサポートの話。
・19世紀末~20世紀初頭のヨーロッパ移民が学校をどう見ていたかという話。
・学校が女性や子どもの生活にどう影響を及ぼしたかという話。
・高等教育、カリキュラム史、都市部、連邦の役割に関する教育史研究の話。
など、過去25年間の教育史に関する動向を把握する論考が掲載されているようです。