目次は以下の通りです。
第1部 ヤマ場をおさえる学習評価のポイント
第2部 教科における指導と評価の計画と評価例
第3部 学習評価のそもそもとこれから
付録 評価規準に関する資料
現代の学習指導要領の動向を踏まえつつ、現職教員に分かりやすく、学習評価の方法考え方について事例豊富で具体的なノウハウに示している本です。
私自身、知らなかったことも複数あり、大変勉強になりました。
おそらく、学校現場での場面設定など、リアリティを追求した記述が多いので、結果として、理論書ではややイメージしづらい情報が見え透くなったのかもしれません。私にはそれが大変有益な情報でした。
(そういう意味でも、『授業づくりの深め方:「よい授業」をデザインするための5つのツボ』の内容がより具体化されているように、随所で感じました。)
著書の最初にこう書かれています。
「指導と評価の一体化」が叫ばれ、指導改善のための評価の重要性が指摘されて久しいですが、それを追求すればするほど、評価が煩雑化し、授業や学びの充実から遠ざかってしまう状況も見られます。
p.3.
本書では色々な論点が出てきますが、一番印象に残ったのは、どうすれば評価が煩雑にならないか、という点だったように思いました。
その際に、たとえば形成的評価に関して、「「限られた時間の机間指導で全ての子供の学びを把握しよう」とか、ましてや「すべての過程を記録しよう」などとは思わないでください。」(p,20.)と書かれていたり、
単元計画に関して、「単元計画の「重点化」が弱いと、評価場面は拡散して記録の回数も多くなりがちです。」(p.27.)と書かれているのは、その通りだよなと。
同時に、本書で言う「ヤマ場」を作る意義も、評価の多忙化と絡めて説明されていました。
ものさし(評価基準表)が作られるものの、それを当てる「見せ場」が準備されていない状況が、「指導の評価化」と「評価の多忙化」を生み出しているのです。課題研究での論文作成・発表会や教科のパフォーマンス課題など、育った実力が試され可視化されるような学びの舞台を設定していくことが重要です。
p.20.
個人的にも、かなり納得のいく説明だった気がします。
単に、パフォーマンス評価の理論的な特徴をに説明されるよりも、評価の多忙化、重点化の話の方が理解しやすいような感覚も抱きました。
一人一台コンピューター活用の時代になっても、やり方次第で多忙化に拍車がかかるという話(p.66.)も、まさにその通りだなと。
その他、
「ルーブリック評価」という誤解についての話(p.44)や、
「出口の情意と入り口の情意」の話(p.48.)や、
「思考判断表現」と「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法の関連性(p.50)の話や、
ブルームによる能力の分類・階層構造の確認検証の経緯が、観点別評価とリンクする話(pp.104-105)や、
評価の統一性という視点(p.111.)など、
私自身、学び直した次第です。
各教科の評価事例も豊富に掲載されており、評価に悩む人に手を差し伸べる本になっているような気がします。