感想メモ

Angus, D. L. & Mirel, J. E. (1999). The Failed Promise of the American High school, 1890-1995. Teachers College Press.

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米国中等教育史を通史で学び直したいと思い、通読しました。

ハイスクールの歴史を19世紀末から1990年代まで通史で振り返った上で、ナショナルスタンダード政策の重要性を強調したような内容になっています。
NCLB法が制定される前に出版されている点も、重要かと思われます。

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目次は以下の通りです。

The Professionalization of Curriculum Planning
Vocationalizing the High School? Curriculum Expansion
The Transformation of the High School During the Depression
The Triumph of Curricular Differentiation 1950-1964
The Triumph of Curricular Differentiation 1964-1975
The Restoration of the Academic Ideal? Upheaval and Reform
Implications for Policy and Practice

本書では、いわゆる従来的なカリキュラム史を振り返りつつ、ハイスクールの生徒の履修科目の実態を明らかにすることを試みています。科目設置状況ではなく、生徒の履修状況に注目するのがポイント。

主にミシガン州のグランドレピッズや、デトロイトなどの生徒の履修データを膨大に扱って分析しています。

これによって、米国教育史の定説に幾つも反論していくような流れになっています。

例えば、1910~20年代の職業教育運動が推進された頃、ハイスクールにおける職業系のコース自体は増えたが、履修者はそれほど増えていない。むしろ多数の生徒が履修していたのが学問コースで、職業コースをとらない生徒もたくさんいた。

世界恐慌・戦中期には、ハイスクールが「保護主義的な機関」としてのハイスクールへと変化したとされます。
世界恐慌も関わり、若者と労働市場との関係が変容する中で、ハイスクールの大衆化は一気に進みます。
そこで、大学準備、職業準備の機関ではなく、若者を一定期間収容する機関としてのハイスクールの役割が重要となった。
当時のハイスクールが採った方策は、職業準備ではなく、若者の即時的なニーズ、とりわけ生活スキルなどの教育に力を入れることだったそうです(シティズンシップもこの即時的なニーズの一部として捉えられています)。

戦後の進歩主義教育批判やスプートニックショック以後の政策下では、学問教育が推進されたように捉えられることも多いですが、学校の生徒の履修記録を見てみると、それほど大きな変化は見られない。
むしろ、学校現場がカリキュラムの分化を支持し続けた点で、進歩主義教育時代と変わらなかった。

学校現場がカリキュラム分化を支持したという点では、1970年代の公正重視のカリキュラム改革下でも同様だった。むしろ、生徒の多様性や自由を容認しようとした結果、カリキュラムの分化・差異化を容認する結果ともなった。
ここにカリキュラム分化の起こる学校制度の完成を見ています。

きらびやかなカリキュラム論争は学校現場には影響を与えず、多様な生徒が異なる内容を学ぶというカリキュラムの分化が進み続けた。むしろ、カリキュラムを分化させる方針によって、批判を常に回避し続けてきた。これが1970年代頃までの本書の認識かと思います。

それに対して、1980年代以降の『危機に立つ国家』以後のスタンダード政策の台頭によって、状況は一変します。

第一に、各州の卒業要件や科目設置状況に大きく変化があった。卒業要件のハードルが厳格化され、学問教科をより多く履修しなければいけなくなった。

ただ、履修状況を詳しく見ると、学問教科を増やしつつも、非学問コースの生徒には、影響がないようにしている。結果として、全生徒に高いハードルを課すものではない。他にも科目名を変えても、似た内容を教えていたりする。
これらのことから、本書では、学区レベルでは、ナショナルスタンダード政策を支持していなかったり、厳格なスタンダードを作ることに教育者たちが抵抗していた、と捉えています。

これらを踏まえ、著者は最終的に、
卒業要件を強化し、教育内容の規定し、学問教育の重視を求めるに至ります。
同時に、教育学者にも全ての生徒に可能な授業方法を研究せよと促す。

「全ての生徒に高い教育の質を平等に保障すべき。」というスタンスが徹底して取られています。


1980年代以降のスタンダード政策の流れを歴史的に追ったアメリカ教育史の研究は日本語でも色々と翻訳されています。
それらと見比べて吟味する必要がありそうです。

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