読書メモ

藤原さと(2025)「こどもと民主主義をつくる:教育にできること』平凡社.

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教育における民主主義であったり、民主主義へと繋がる教育のあり方とは何かという点を軸にしながら、世界各国の事例や、幼児期、小学校気、10代、成人の民主主義と教育の事例を論じるなど、非常に幅広い論点が包括されている。そういった様々な事例や論点を、比較的読みやすい文体で、うまく一冊の本にまとめているのは、筆者の表現力の高さがなせる力だと感じた。

個人的には、第二章の「幼児期の民主主義」や、弟3章「小学校からの民主主義」の内容に興味惹かれた。幼児期、小学校などと書いているように、発達段階ごとでできる学習のあり方が異なっていることを示そうとしている。その際に、ビースタの論を用いて、とりわけ幼児期においては、ストレートに民主主義を論じたり扱うのではなく、あくまでもデモクラシーの土台づくりの重要性があることを指摘している(p.71.)。また、ロン・バーガーにとっての民主主義が、「自分はここに属している」「自分には価値がある」「自分には選択肢と影響力がある」と思える文化そのものである、とも述べている(p.102.)。
これらの民主主義の語りは、非常に広い意味を含んでいるように思う。それこそ、民主主義の論点に直結してきそうな公共的・社会的な問題を「ダイレクトに」扱う必要はないわけで、その土台作りのために、遊びであったりモノづくりが非常に重視される場面も出てくる。「生命に対する畏怖を感じたり」「安心して育つための環境や愛されて育つ環境」も必要となる。そう考えた時に、「民主主義教育」という射程に実に様々な教育が入ってくることになるだろう。本書ではデューイの論や、倉橋惣三の論を参照しつつ、以下のようにも述べる。

「共同体の構成員が目的の更新に興味も持ち、コミュニケーションによって、自分たちの活動を主体的に変化させていくことによって、「混乱を引き起こさないで社会変化をもたらす」ことができると考えていた。そうした活動のベースにあるのが、「遊び」である。子どもたちの良質な「遊び」の経験こそが、生き生きとした共同体と、民主的なプロセスにおけるより良い社会への動力となっていく。」(p.75.)

この「遊び」と「民主主義」という一見すると直結しないかのように見える両者の関係が繋がる点にこそ、本書の描く民主主義の教育の広い視点が示されているように個人的には思えた。
おそらく私は、日頃、教科教育に関わる機会が多いこともあり、「民主主義教育」の定義を狭くとらえすぎているのかもしれない。と同時に、その授業一つ一つにおいて、何が育ちそれが民主主義に繋がっていくのかという話になった時に、広い射程はともすると抽象的な議論に陥ってしまわないのか(ある意味で、何でもかんでも民主主義教育、と言えてしまわないか)という点も、今後考えたい自分自身の宿題となった。

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