
自衛隊をはじめとする安全保障の議論を、ウクライナ侵攻と関連付けて論じた本。一番大きな論点は、ロシアのウクライナの侵攻によって、「抑止の論理」が揺らいでいる点(p.201.)だと読んだ。アメリカは「抑止」によってロシアを止められなかった。これは、戦略核の応酬による相互破壊、大国間戦争を避けるという「抑止の論理」が機能していないことを意味する、という指摘があった。
その他に印象に残った一点目は、アイスランドの事例について。日本ではアメリカ軍駐留が終わるとすれば、自衛隊の5倍以上の強化などの話に直結して語られがちだが、2008年のアイスランドは、アメリカ軍駐留を終わらせつつ、独自の国軍の増強をする選択肢をとらなかった(p.139.)。この点から得られる示唆は大きそうだと思えた。二点目として、安全保障をめぐる「日本における世代間の分断」の話が印象に残った。ウクライナ・ロシアの戦争は世界情勢を大きく変えたが、団塊の世代的な平和思考と、現在の中堅世代の研究者との間には「埋め難い学問的・思想的分断」があるという(p.186.)。そういった戦後の平和教育を受けてきた団塊の年金世代とその後の現役世代との分断をどう見るか。
その他、日本において自らが犯す戦争犯罪を裁く法律がない点。北極圏の氷が解けると地政学的なパワーバランスが変わる点。軍備はあくまで専守防衛レベルにとどめるべき、という点。など。座談会後半では、「国家総動員法」的な必要性の有無について、著者たちの中でも意見が割れていた。