
シリアスゲームの考え方やその事例、作り方について紹介している本。シリアスゲームは、「エンターテイメント性を持ちながら、社会の諸問題を解決することを目的としたゲーム」と説明されている(p.18.)。本書の良さは、シリアスゲームをやっている当事者たちの楽しそうな体験談や事例をたくさん読めて、かつ、「もしかすると自分にも作れるかも!」と思わせてくれる点にあるように思えた。ゲーム教材は、どうしても作り込みやディテールの完成度に目が行きがちで、開発をする一歩目に躊躇しがちなように思う。その点、この本は、作成方法を6ステップに分けて説明しており、ゲームデザインのワークショップの事例なども織り交ぜられているので、読者のゲーム開発意欲が強く刺激される。
印象に残った点は二点ある。一点目は、事例の多くが役所や職場、地域など職業的な研修や生涯教育に関連する場であること。自分が学校教育を見がちなこともあるのだけれど、ゲーム教材が様々な地域や生涯教育の場で使えることを実感できる内容になっている。二点目は、本書のゲーム作成時に陥りやすい課題点として「メッセージよりゲームづくりを先行させてしまう」点が挙げられているように、しっかりと社会課題や社会構造を分析した上でゲームを作るべきことが強調されている点だった。同時に、正論や一般論を伝えても多くの人の心に響きにくい問題を実感を持って考えたり理解できるアプローチとして、シリアスゲームの強みが伝わってくる。そして、広く見れば教材研究とは何かを考える素材に満ちた本のように思えた。