
研究者でもあり、重度心身障害当事者の親でもある著者によって書かれた本。尊厳死などの傷害と死に密接にかかわる論点の海外動向などを詳細に示している。同時に、当事者としての体験やエピソード、過去の想いなども豊富に載っており、かなり心揺さぶられる。尊厳死や「無益な治療」論が、臓器移植やコスト論と容易につながりやすい点などを改めて認識できた。同時に、そもそもの障害や障害者に対してネガティブな認識が背景にないかどうかを見つめる必要があると感じる。印象に残った二点がある。一つは、医師による自殺幇助と安楽死の包括的合法化には「痛苦の責任が当の患者にあるように見えてしまう」という逆説的な効果がある(p.191.)と指摘がなされている点だ。自己決定権の名のもとに、決定権が生まれることの問題点であったり、その他のサポートのあり方が無いかと考えさせられる。二点目は、「二者択一の議論がとりこぼしていくもの」(p.172.)の議論であり、尊厳死の法制化議論のAかBかの間に埋もれかねない、一つ一つの生の事例や当事者の状況を把握していくことが重要なのではないか、それを怠ることが「無関心の一形態」ではないか、といった主張も印象に残った。