読書メモ

今泉みね子(2018)『ようこそ難民!:100万人の難民がやってきたドイツで起こったこと』合同出版.

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


ドイツ人の少年や家族が、シリアから来た難民家族と出会い、関わり合いを持って行く過程が中心に描かれたフィクションの物語である。ディテールや感情が深く描かれているので、通常のニュース記事等では推察できない人々の気持ちの揺れ動きなどを含めて考えながら読むことができる。主人公たちの学校でのシュライバー先生の授業・説明であったり、主人公の父母と祖父母との難民受け入れをめぐる言い争いなどを読むことで、基本情報がおおよそ手に入る。
父母VS祖父母の「難民の受け入れは不公平な押し付けなのか?」の言い争いでは、ドイツ国内での世代や地域差なども背景に盛り込まれているし、難民が関わる犯罪が数は少なくともいかにバッシングの対象になってしまうか、難民庇護申請が却下されることが如何に当事者にとって絶望的なものかが、エピソードとして分かりやすく示されている。ドイツ語の教室やインテグレーション教室などがあるものの、ドイツ語がハードルとなったり、資格、専門知識・技術を持つ難民が少なく、就職状況が決してうまくいっていない点も説明されている。
難民に冷たい祖母が、難民と関わる交流会に参加することで心境の変化が起こる描写がある。結局のところ、固有名詞の知り合いをつくることが、相互理解の大きな一歩なんだろうなあと再確認した。『ドイツ基本法』における難民保護に関する記述や、今後世界で増えて来るであろう「環境難民」の話にも射程を広げて論じられており、参考になる点は多かった。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

English

コメントを残す

*

CAPTCHA