
同じタイトルの神野直彦(2024)『財政と民主主義:人間が信頼し合える社会へ 』とは、全然タッチが違うのだが、エッジが効いていているように思えて面白かった。有権者や政治制度・行政が長期的な時間軸で政治選択をすることが可能か(そのためにはどうするべきか)が主題になっていると感じた。
必要な対策がわかっていながら、財政問題が議論の後回しになったり、予算や赤字が膨張していく問題を構造的な問題として捉え、その解決策を提案している(明確な提案をするスタンスが鮮明だった)。
本書を読むと、有権者や政治家や行政関係者に対して、その思慮深さや熱意をただ期待するだけでなく、それぞれが最大のパフォーマンスを出せるような環境を整える重要性を感じられる。有権者が長期的な判断をしにくいのも、財政赤字が膨張するのも、構造上の問題という側面がある、ということか。
また、「世代間格差は、『財政的児童虐待』か」(ボストン大・コトリコフ教授)という表現には苦笑いしてしまうが、近代国家の政治において「法の支配」と「財政民主主義」が大きな意味を持ち、その上で、財政民主主義が「将来を見据えた選択をする」点において、大きな課題を抱えている、という点は伝わってきた。財務省的な経済政策展望という側面もあると読んだ。以下引用。
「財政制度や社会保障制度が発達したことで、現在のわれわれは、将来世代に税のコストを先送りし、現在世代が資源を先食いするという世代間搾取の能力を手に入れてしまった。このような能力は近代民主主義がまったく想定していなかったことであり、将来世代の利益を現在世代の搾取から適正に守る政治の実現は、民主主義の政治制度にとって歴史上はじめて直面する難題である。」(pp.307-308.)