読書メモ

水野直樹・文京洙(2015)『在日朝鮮人 歴史と現在』岩波新書.

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『在日朝鮮人:歴史と現在』を読了。明治から現代までの朝鮮ルーツの方々の目まぐるしい歴史を分かりやすくまとめている本。不勉強な私は、こうした本を一冊ずつ読み重ねて学んでいくしかない。改めて、日本による戦前・戦中の朝鮮人労働者の状況や、強制動員の実態、戦後の差別・排除の構造など含め、植民地支配、植民地主義の問題は感じる点が多かった。

同時に、今回読んで再認識したのは、日本での在日朝鮮人の方々の状況への、朝鮮半島の政治情勢や、占領期アメリカや冷戦構造からの影響の大きさについてだった。20世紀前半の大阪在住の朝鮮人の方々の中で済州島出身者が非常に多かったことを私は知らなかった。

戦後直後は、占領下のアメリカの目線を強く感じる。共産主義との関係から治安維持が優先され、例えば、外国人登録令も、朝鮮半島の政治情勢の影響を受けた占領軍の治安維持的性格もあったと記されていた(p.109-110)。阪神教育闘争ふくめ、強制鎮圧を「主導したのは占領軍」である点(p.113.)も関連して思えた。

日本での朝鮮人・在日朝鮮人に関わる団体の構図も、大まかに理解するのに適した本だった。朝連、民戦、総連と民団、韓学同、韓青同などもそうだし、帰国事業当初の総連の圧倒的な影響力とその後の弱りなども。同時に、在日朝鮮人の96%は韓国側領域の出身者であった(p.143)状況下での母国の政治情勢や日本での貧困の状況なども、問題の複雑さを象徴している気がした。

朝鮮半島での政治情勢との影響については、例えば、日韓条約によって引き裂かれ、選択を迫られる2世コミュニティの問題や、70年代の在日朝鮮人にとっての母国の独裁制をどう受け止めるかという問題(反独裁民主運動)についても、改めて学ぶことができた。

その他、日立就職差別裁判闘争以後の、新たな形の連帯、運動形態が生まれたこと。民闘連を中心とした国籍条項撤廃への取り組み。多文化化が進む中で、非政治性をかかげるなど、南北イデオロギー対立とは異なる連携などを含めた在日団体・組織の変容など。

終章は多文化社会における在日朝鮮人について。オールドカマー、ニューカマーの多様性はもちろん、中国系移民をはじめとする様々な移民増加や、近年の韓国の急激な多文化化の中で、在日朝鮮人にとっても、「国民」概念自体の変容が起きているとも指摘されていた。最後の高地としての公務就任権と地方参政権が挙げられていた。

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