読書メモ

岩田康之他編(2021)『教育実習の日本的構造:東アジア諸地域との比較から』学文社.

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『教育実習の日本的構造』を読了。日本の教育実習の独自性や特徴を明らかにするために、韓国、中国、台湾などの大学教員養成との比較が行われている。

実習先でスーツを着なければ!という忖度意識が一番働くのは日本だという。ただ、その意識が生まれる背景には教員養成制度の仕組みの違いがあることが本書で詳述されている。端的に言えば、他国では、教員養成をするプログラムの総数や、教職課程を受ける学生の総数を絞り込んでいるため、日本で言われるところの「ペーパーティーチャー」「教育実習公害」の問題があまり生じない。この点は、日本的な「開放制」と質保証の相克ともいえるようだ。本書でも、将来的には「何らかの形での量的な絞り込み」が「今後のソリューションを考える前提」(p.191.)と示唆していたが、それが日本の現状とどう整合していくのかなど、より詳細を知りたいと感じた。

もう一点印象に残ったのは母校実習の是非についてだった。2006年答申以降、母校実習を避けるようなメッセージが政策的には出ているが、本書の調査では、教職課程を持つ日本の大学の多くが母校実習に頼っているところがあることが示されている。それは先述した日本的な教員養成の仕組みにも由来している。あわせて、アンケート調査などを行うと教職課程運営のマンパワーの足りなさも深刻化している。ゆえに本書では、母校実習を避ける流れの困難さを指摘していた。

国際比較の視点から、実習生を受け入れる学校現場側の「悲鳴を挙げたくなるような現状」(p.186.)についても一層理解が深まる。このような状況で、教育実習の時期の柔軟化がそもそも可能なのかと考えてしまう。

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