読書メモ

山﨑準二ほか編(2024)『「省察」を問い直す:教員養成の理論と実践の検討』学文社.

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『「省察」を問い直す』を読了。理論と実践の往還とは何か?という今の自分の問題意識にドンピシャで面白かった。最初に「省察の非省察性の強まりという皮肉な状況」(p.i.)への本書の批判的な問題意識は明確で、「システム化された省察」の弊害が様々に論じられていた。

第2部の事例研究がとても良かった。省察に関わる大学教員の語りから、〈時間的な制約〉による規定性、カリキュラムにおける〈成果〉を意識せざるを得ないという難しさ、正しい省察のあり方に規定される語りなどの論点が描かれている。大学教員も人によって大きく考え方が違い、本書でも言っていたように各専門分野の特性を生かした「振り返り」の具体的方法を模索する路線がよいのだろうと感じられた。

もう一点強く印象に残ったのは、中教審答申(2022)において、「理論と実践の往還」「省察(省察力)」を結び付ける議論が、学部段階の教員養成にも拡張された点を批判的に論じている点だった。教職大学院の院生に調査すると、ストレートマスターよりも現職教員の方が省察が深まる傾向にある。とすると、教育実習しか経験していない学部生(さらには実習も経験していない学生)に省察を促すことはどういう意味があるのか。単に体験重視になってしまわないか。こういった問いが内在されているとも理解した。

その他、1980年代以降に世界的に省察概念が普及した背景に、ニューライト的な個人主義や、教員を統制する意図が働いているという話。欧米での事例で、実現のための「資源や蓄積の多寡」をどう見るか。

教員側が、学習者が変容したという証拠づくり・成果づくりのために振り返りを利用してしまっていないかという話もあり、そもそも省察が深まるとは、更には、そこでの科学的、理論的な探求とは何かという点を何度も往復して考えさせられる。

私自身が安易に「振り返り」を多用してないか、改めて振り返るきっかけになる内容でした。

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