読書メモ

安藤昭子(2024)『問いの編集力 思考の「はじまり」を探究する』ディスカヴァー・トゥエンティワン.

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『問いの編集力』を読んだ。松岡正剛氏に師事し、編集工学を専門とする著者。探究が生まれる最初の疑問はどのように始まるのか?を様々な視点から論じている。

「「問う」という行為をつきつめて考えていけば、それは「情報」を「編集」することにほかならない。」(p.11.)という話に興味惹かれた。個人的には、「編集」の意味は、「伏せて開ける」ことの延長として、問いを作り上げる際の読書の価値を強調している点が一番理解しやすく思えた。問いを作り考える過程において、本人自身が「想像力」を膨らませ、働かせる場面が大切である。それゆえ脳内で何らかのイメージに変換せざるを得ない文字情報の方が(YoutubeやSNSよりも)、「伏せて開ける」構造に近い(p.120.) 。ここら辺の話は、また、制限のない世界では創造は生まれない(p.181.)という話や、ベイトソンの思想が多く引用されている点と深く繋がっているように思えた。

人は、目的合理的に判断、行為をするわけではなく、周りの環境に大きく影響を受けながら、時に迷いながら、「わからなさ」を残しながら、偶然性を大切にしながら、意思決定や意味づけをしているという点が強調されおり、それこそが「試行錯誤」の重要性と繋がってくるところのように感じられた。

最後にジャック・アタリの『時間の歴史』から、問うことの重要性を論じ、(小手先のタイパではなく、)「自己の時を生きる」とはどういうことかという問いを提示していたのが印象的だった。インターネットや生成AIの普及する時代において、問うことの「質」を考え、読書の価値へと戻っていく内容に個人的にも刺激を受けた。

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