読書メモ

岩田康之(2022)『「大学における教員養成」の日本的構造:「教育学部」をめぐる布置関係の展開』学文社.

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『「大学における教員養成」の日本的構造』を読んだ。印象に残るのは、「開放制」概念の揺らぎが、とりわけ現代の市場原理や規制緩和の文脈の中でより顕著になっている点だった。様々な新規プロバイダ(代表例は初等養成の私学)が増え、地方自治体の採用施策も普及する中で、大学の教員養成課程への信頼が落ちていっている、という構図を強調していると私なりには捉えた。

ただ同時に、歴史的視点を豊富な本書を読んで思うのは、現在の火種は戦後の「教育学部」が設立される当初より存在する問題だという点だった。例えば、教育学部で元々重視されたのは、「一般教養であり、教育学そのものではなかった」(p.65.)という話や、設立当初の「ディシプリン不在の『教育学部』」の話が、現代の規制緩和のもとでの「教育学者なき教育学部」の生成の展開とも繋がってくる点などはそれにあたると思う。教育学の価値とは何かという点が、絶えず底流で論点となっているように思える。

教員養成課程における初等教育と中等教育の違いを再認識した。それぞれの話が初等養成の話か中等養成の話か注意しないと、経緯が異なることもあり、文脈を誤解しそうだ。全体的に、教育政策に翻弄される国立大学の苦悩の描写の印象が強い。教員養成と教育学の関係性について理解を深めていきたい。

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