『関私教協 30年の歩み』を読んだ。関東地区私立大学教職課程研究連絡協議会(通称、関私教協)の創設から30年の流れを創設メンバーへのインタビューや、当時の記録資料を収集整理し、基礎情報を示した本。私が不勉強な面もあるが、私学教員養成課程に関わる一人として、様々な刺激を受けた。
前提となるのは、1970年代に私学教員養成への批判の目が向けられた点で、そこから私学教職課程関係者の協力や研究、提案が進められていくプロセスがインタビューの中から見える。読んでいて個人的に感じたのは、私学の開放制の理念が、そもそも「即戦力」志向のシステムとは目的が合致しにくい点だ。
むしろ、各学部での学びを軸に、広い視野や教養をもった教員を育てたい、というのが少なくとも創設期メンバーに通底する問題意識だったように見えた。同時に、私学の教員養成を考える際に、その私立大学の独自の理念を大事にした上での、教員養成のスタンスを示すことの重要性が何度も指摘されていた。
また、国公立大の教育学部と比較されることもあるからこそ、教職課程の学問的基盤は何か、という論点やこだわりが、少なくとも創設期メンバーには意識されているように感じた。これに関わり「なかなか教科教育学とは何かということは明らかにならないんですよね」(p.31.)とあるように、教科教育法等の学問基盤の有無や可能性については、やや消極的なトーンを感じなくもないというか、教職課程を研究的に考えていくうえでの今後の課題のように示されている気がした。この教科教育に関わる議論を、同時期の他の学会等の視点から見たときにどう見えるのか、引き続き学んでいきたい。
ちなみに、「開放制教員養成のおもしろさは教師にならなくてもいいという自由を認めているところがあるんだ」や、木や草を育てる地下水のようにペーパーティーチャーが増えてなんで悪いんだ、という話(p.33.)には、かなりしびれた。