読書メモ

山下達也(2020)『学校教員たちの植民地教育史:日本統治下の朝鮮と初等教員』風響社.

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『学校教員たちの植民地教育史』を読んだ。日本統治下朝鮮において、初等学校の教員を取り巻く環境や役割を論じている。主に普通学校における朝鮮人教員と日本人教員が混在する場での両者の関係を論じている。

例えば、同じ教員でありながらも、朝鮮人教員と日本人教員の役割や給与に差をつけられた。それゆえ、朝鮮人教員とは、日本人との「民族」差を露骨に提示され続けながらも、日本人との「同化」をいち早く果たすことが求められた存在であったとされ、「巧妙に仕組まれた施策」(p.51.)であったと指摘されていた。

一方、教育実践史や雑誌を紐解くと、当時の対朝鮮人の国語教育の研究において、日本の模倣ではなく、「朝鮮独自の教育目的、方法」が必要とされていることなどが、「脱内地延長主義」(p.48.)の顕れだったとも述べられていた。

朝鮮人教員は、朝鮮児童を同化させる重要な役割がある一方で、植民地支配にあらがう人物育成をおこなうこともあった点が指摘され、「植民地権力とのある種の緊張関係」(p.52.)に言及がされている。単純な同化推進者と捉えられない以上、その実態検証の必要性があるとも述べられていた。

先日読んだシリーズ本とも合わせて、教師の属する立場性や実践史のディテールを精査していく意義を強く感じさせる本だった。

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