『体験格差』を読んだ。放課後の習い事や、週末・長期休みの旅行、地域行事やスポーツ・芸術へのかかわり、動物園・博物館などへ行くなどの「体験」に、所得ごとで格差があることに焦点を当てた本。年収300万円以下の家庭での「体験ゼロ」の大きさや、子どもの体験の有無が親の体験の有無と関係している点など、様々なデータで示されている。
体験の格差は小学校4年生までの間に特に顕著になるようだ。体験格差の問題性を、体験の「楽しさ」の他に、社会情動的スキルの観点からも指摘されていた。逆に、体験格差と入試との関係はそこまで強調されていない(一部指摘はあるが)印象を受けた。
第2部の「それぞれの体験格差」ではインタビュー記録が示されており、体験格差を親がどう捉えているか、なぜ子どもに体験させにくいのかの構造の一端が様々な文脈の中で示されている。後半では、体験格差を是正する経済援助や、ネットワーク構築、環境確保などの幅広い提案が示される。
紹介されてたドイツの「フェアアイン」の組織にも興味惹かれた。子供の「遊び」を保障する議論とはまた違う形で、「学習」以外の教育保障のあり方を再考できる本だった。ある種、古くからあるテーマという気もするが、今なぜその格差が焦点化されるべきかという社会背景の変化と合わせて学び直したい。