読書メモ

キャロル・ギリガン著:小西真理子他訳(2023)『抵抗への参加:フェミニストのケアの倫理』晃洋書房.

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『抵抗への参加』を読んだ。本書における「抵抗」とは、家父長制文化への抵抗であり、その文化への違和感をもたないようにと促そうとする社会から、「声を奪われる」ことへの抵抗だと感じた。

著者は、思春期を迎える少女の語りに着目する。学校の授業や放課後の様々な環境の中で、男らしさ、女らしさを含めた家父長制文化の通過儀礼を強いてくる社会に対する、思春期を迎える少女たちの抵抗と認識へ注目している。それらの抵抗は、時に政治的な抵抗でもある。ジェンダー二元論に抵抗し、それ以前にあった別の「関係性」や「声」を奪いにくる社会への抵抗でもある。

また、これは少女に限られた話ではなく、「少年たちも内心では真実を隠していることを知っている」(p.209.)という。その他、ヒステリー研究、精神分析、フロイト、トラウマ研究、文学作品の考察も、分析視点含め勉強になる。『アンネの日記』を読み直したくなる。一見すると適応に見えるプロセスも、見方を変えると「声の喪失」や「記憶の混乱」(p.112.)とも言えるし、ヒステリーやトラウマの中に、家父長制への抵抗が繋がる例も示されている。

ギリガンの『もうひとつの声で』でのケアの倫理の考え方が、伝統的な女性差別を助長するとの批判への応答でもある本書。関連書も読み、理解を深めたい。

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