読書メモ

鈴木大介(2023)『ネット右翼になった父』講談社現代新書.

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『ネット右翼になった父』を読了。読めばわかるが、タイトルから想起する結論とは、よい意味で異なる内容。読んでハッとさせられる点も多い。対父親というわけではないが、「○○なんて言う(する)なんて、あの人は…に違いない」と、相手の政治思想を断定してしまう感覚は、私もわかる。そして、そのレッテルが、本人を見ているのではなく、自分の先入観と枠組みで決めてしまっているという点にも共感した。

見えやすい結果ではなく、なぜ相手がその言葉を発し、その行為をしたのかという背景を知りたいという、コミュニケーションを求める気持ちが大切なのだろうと(こんな昨今だからこそ)尚更思った。もう一点印象に残ったのは、人の政治思想というのは必ずしも一貫しているものではないし、人は見たり聞いたりしたメディア情報にわかりやすく「染まる」とは言い切れないという点だった。

前に『日本の右翼と左翼』のことを思い出した。あの本では、現代の人びとが確固たる価値体系を持っていないことを否定的に論じていた(あの本も独特の言葉選びだった)が、実際の私たちの政治意識というのは、矛盾や一貫性のなさ、論点による傾向性の違いなどもあるのだろうとも思えた。「積極的日和見主義」という表現に強みも感じるところだった。

世代や年代の違う相手に対して、相手が過ごしてきた時代背景や人生に思いを馳せ寄り添うことは意外と難しいことだと思う。でも、「今は多様性の時代だから」などとトレンド化して他を排除するのではなく、目指すべき信念を一方で大切にしつつも、目の前のその人を深く知ろう・関わろうとする意志が重要だと本書から感じた。

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