読書メモ

伊藤真(2009)『なりたくない人のための裁判員入門』幻冬舎新書.

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『なりたくない人のための裁判員入門』を読了。総論としての司法への市民参加の意義を整理しつつ、裁判員制度の議論の不足や問題点を多方面から説明し、仮に裁判員に選ばれた際にどう向き合うべきかを論じている。全体的に読みやすい。

一番印象に残ったのは、「裁判に市民感覚を反映させる」という際の「市民感覚」が、「市民の感情」ではなく、「市民の理性」である(べき)という点で、著者は何度も強調していた。「素人の判断」といった表現も、裁判が大衆の感情にしたがう集団リンチのようにならないようにせねばと指摘されてる。

同時に、裁判員制度の構造やマスメディアの情報などの中で、感情ではなく理性で判断するハードルの高さも感じた。量刑判断をする難しさもここに含まれる。また、「真犯人の発見」が裁判官の仕事ではないなど、裁判官の仕事の限定性を強調されている。陪審制や参審制などとの比較も分かりやすかった。

裁判員制度は「陪審制制度の次善策」と捉えられていると読めた。裁判員制度が「国家が国民に押しつけているようなイメージ」があると率直に述べられていた。裁判員に著者が求める「『わからない』は意味のある立派な意見」といった話は、「わからない」と言える社会基盤を作る必要があるように感じた。

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