読書メモ

大井赤亥(2021)『現代日本政治史:「改革の政治」とオルタナティヴ』ちくま新書.

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『現代日本政治史』を読了。冷戦構造が終わった日本では「保守と革新」の対立構造が終わり、革新が衰退し、その後の大半の政局が「守旧保守」と「改革保守」の対立だったことを描き出している。1990年代以降に何度も叫ばれている「改革の政治」の大半が、保守政治がその内部から「守旧保守」を否定解体し、新たな経済成長のための「改革保守」のレジームを作る保守政治の自己再編成のための運動(p.32.)だったとされる。

自民党の中の改革保守派と、非自民系保守系改革派の動き、さらに連合や労働界からの拡大版「社公民路線」に向けた動きが、相互に交差し融合し、関連し合っていることが分かる。結果として、旧民主党がリベラル・革新とは言い切れない感じがよく分かる。

その他、例えば、改革派と守旧派の対立構図は小沢一郎の登場から作り上げられ今に至ること。小泉政権が実に見事に小選挙区制を利用したこと。松下政経塾が改革の政治を民主党側から突き上げるための政治家輩出機関となっていたこと。民主党政権時代や立憲民主党の登場が、「改革の政治」のオルタナティブを模索する灯火ともなり得ること。特に若者層にとって、維新政治が「革新」として映っていること。小池政治がリベラルなポピュリズムともとれることなど。

「消費者」とは何かという点が印象に残った。中間団体の弱体化や個人のアトム化が進み、労働者意識も薄れ、ネオリベラリズムと親和性が高くなる構造が指摘されている。ポピュリズム生起の背景と併せて深く学びたい。新自由主義の失速動向と、その先にある市民社会の活性化のビジョンにも興味惹かれた。

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