『特別支援教育 – 多様なニーズへの挑戦』を読了。障害の種類や程度」に注目してきた特殊教育と、一人一人をより多面的総合的に見ていこうとする特別支援教育。このコントラストの中で特別支援教育へのパラダイム転換が強調されている。
もはや特別支援教育の主たる学びの場は特別支援学校ではなく、小中学校であるということがデータから理解できる(p.26.)という話とも関連して、本書でも、通級や特別支援学級での指導について多くの紙幅が割かれていると感じた。だからこそか、著者は、通級による指導や特別支援学級における特別の教育編成過程に関して、特別支援学校の学習指導要領を参考にされていることを、「他から借りてくる形」になっている点に何度も批判がなされていた。通級や特別支援学級における指導そのものに焦点を当てた教育課程編成を考えるべきというスタンスが強く見える。
ニーズ、サイエンス、パートナーシップがキーワードとして掲げられていたが、特別な教育的ニーズへの配慮や対応を、(特別支援教育コーディネーター含め)組織やシステムとして捉えていく必要があることが実感させられる内容。(校内での支援体制の構築が焦点化された静岡地裁の話などは印象に残った。)
その他、盲学校、聾学校に比べての、養護学校義務化までのタイムラグが生じた点や、重度・重複障害者の教育の権利獲得への動きなど、教育史的に深めて理解したいと思える点も多かった。今後の宿題としたい。