読書メモ

林田敏子(2013)『戦う女、戦えない女: 第一次世界大戦期のジェンダーとセクシュアリティ』人文書院.

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『戦う女、戦えない女』を読了。第一次大戦下の主にイギリスで、「男の聖域」とされた諸分野に女性が参画し、同時に葛藤/排除の論理と交錯する過程を詳述。市民権が性差と階級で規定される社会が、戦争を通して愛国心・奉仕・犠牲を市民権の価値に加えていく過程ともいえる。

印象的だったのは、警察や軍隊への女性の参入について。特に陸軍女性補助部隊の実態が詳述されてる。隊員の多くがした仕事は、伝統的な「女の仕事」が多かったが、その制服を着ることへの周囲からの反発や、ジェンダー規範の逸脱との批判にさらされた。同時に従来の規範に揺さぶりをかけたともいえる。

様々な制約はありつつ、女性は軍の仕事を誇りに思っていたり、「女性の心」を捨てることなく男性との間に線を引いていたことが描れてる。戦後の職場からの女性排除の速さに改めて驚く。戦後の普通参政権の拡大も、戦争参加の褒章としての側面や「結婚」を条件としていたこと等、問題の複雑さを感じた。

全体として、兵士として戦うことができない女性が、国民/市民であることを何かしらの形で示そうとする懸命な様子が印象に残った。他、戦争に男性を送り出す女性像がシンボル化されたり、看護師イーデェス・カヴェルの話など、本人が望まない形で(複数の立場から)シンボル化されていく怖さを感じた。

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